真新しい紺色のジャケットと白いシャツ。15歳になった少年が西日本の特別支援学校の入学式にのぞんだ。ふだん生活する重度障害児施設の医師や看護師が見守るなか、校歌の演奏が流れた。だが、移動式ベッドに横たわる少年が一緒に歌うことはできない。 目は光に反応する程度で、寝たきり状態から回復する見込みはない。身長は140センチに伸び、にきびもできてきた。「かわいい赤ちゃんだったけれど、もう大きなお兄ちゃんだね」。入所当時から診てきた担当医は話す。 元気に生まれたが、生後半年で心肺停止状態となり病院に運ばれた。その後、両足の骨折もみつかった。母親の当時の話では、父親による暴行があったというが、事件にはなっていない。 両親は離婚し、母親とは連絡がとれない。父親はたまに面会に来るという。 この施設で暮らす障害児25人のうち10人が過去に虐待を受けた。虐待で障害を負った子もいれば、もともと障害があって虐待を受
治療、親同意も難しく 医療ケアが必要な障害児のための医療型障害児入所施設の子どもの6人に1人が保護者らから虐待を受けていたとみられる−−。毎日新聞が施設を対象に実施したアンケートでそんな結果が出た。国は児童養護施設の職員増員など児童虐待対策を進めているが、障害児施設への対策はほとんどなく、現場任せなのが実態だ。 床ずれ予防の寝返りをするため背中を抱えられた女子高生は、口元をわずかにゆるめた。東日本の医療型障害児入所施設にいる少女は、乳児の時に頭の骨を折り、搬送先の病院で硬膜下血腫と網膜剥離が判明した。「きょうだいが高いところから落とした」。両親は虐待を否定したが、以前から不自然なけがが続いていたため、児童相談所(児相)が保護し、退院後に施設に入所した。
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