東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく10年になる。連載1回目に記したように、女優の木内みどりさんは「3・11」を機に政治的・社会的メッセージの発信者となる。私が木内さんに「あの日は何をしていたのですか」と聞くと、予想もしなかった答えが返ってきた。認知症のお年寄りを相手にボランティアをしていたのだという。【企画編集室・沢田石洋史】 原因不明の痛み 埼玉県和光市に和光病院という認知症専門病院(285床)がある。木内さんは2007年から毎月1回ここに通い、認知症患者を相手に詩を朗読したり、紙芝居を披露したりしていた。木内さんはこのボランティアを「言葉のパフォーマンス」と呼んでいた。きっかけは01年にさかのぼる。 当時、小指や右耳の後ろなどにチクチクした痛みを感じて検査を受けても、異常はないと診断され続けた木内さん。インターネットで調べると、「仮面うつ病ではないか」と疑った。この病気