「歌舞伎では登場人物の性格を見た目、せりふすべてにおいてはっきり描き出すことが大事。隈取りをしている人は、普通よりも飛び抜けて正義感が強いとか、あるいは常人を超えて悪いとか。それが顔に現れているという考え方なんです」 東京・日本橋の歌舞伎太郎事務所。講師の立花志十郎さん(42)が、さまざまな隈取りが登場する時代物(江戸期より前の時代や人物の世界に題材を得た作品)の名作「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」を例に解説してくれた。隈取りは顔の血管や筋肉、陰影などを強調しており、赤は正義、強さ、熱血、善などを、青は冷酷さ、悪などを表す。茶色など、赤でも青でもない場合は人以外の妖怪などを表す。