雲は、やっかいだ。朝の天気予報で今日は晴れると聞いて薄着で出かけても、雲がちょっと出ただけで、思いのほか寒くて困ってしまう。雲は日差しを遮るので、背中がポカポカしない。地面も温まらないので、気温が上がらない。 気象学や気候学の研究者にとっても、雲はやはりやっかいだ。雲は、空気が上昇して冷え、含まれている水蒸気が水や氷の小さな粒になったものだ。水蒸気が水や氷になるときには熱を放出するので、雲の増減はその場の気象を大きく左右する。だが、上昇する空気のスケールは小さい。巨大な雲の塊に見える夏の入道雲でも、その差し渡しはせいぜい数キロメートル。これくらいだと、天気を予測するためにコンピューターで雲ができていく様子を再現しようとしても、小さすぎてきちんと計算できない。雲の増減は大気にとって肝心かなめの現象なのに、その点に大きなあいまいさが残っている。 とくに高度の低い雲は太陽からの日射を遮るので、地