前回述べたように、筆者はMMTを支持していません。それにもかかわらず、MMTにはいいところがたくさんあることを認めます。なにより、主流派経済学が理論上の貨幣(お金)を経済学から消してしまったのとは対照的に、MMTは、現代経済の中心には貨幣(お金)があると見極めて、貨幣を中心にした経済学を独自に組立てようとしていることには好感がもてます。 もしかすると、お金が経済の中心にあるなんていうことは当たり前じゃないかと思われるでしょうか。この点は「世間の常識は経済学の非常識」であることを端的に物語っています。いまでも、主流派経済学にはお金が登場しないのです。(嘘だと思うなら、ミクロ経済学かマクロ経済学の教科書を開いてみてください。貨幣は、まったく取扱いがないか、附録か補論に位置づけられているだけです。) 貨幣論を中心に研究してきた筆者にとって、MMTは心のオアシスのように見えます。しかしそれはただの