この映画を見る前は、小栗旬演じる山岳救助ボランティアの「島崎三歩(さんぽ)」を主人公にしたものなのかと思っていた。実際はもちろん三歩も主人公ではあるのだが、もう一人主人公がいるのだ。それが山岳遭難救助隊に入隊した新人女性隊員の「椎名久美」(演じているのは長澤まさみ)。そう、この映画の大きな柱となっているのは、この久美の成長物語なのだ。 実は久美は山岳遭難救助隊員だった父親の影響を受け、父と同じ職務についたという経緯がある。しかし彼女は配属された時、まだ山の本当の意味での恐ろしさ、厳しさを全くわかっていなかった。 でもそれがいいのだ。観る側もほとんどが本気登山なんぞしたこともない人のほうが多いだろうから、久美の目線で山の驚異を一緒に味わえるというわけ。 実際、筆者も驚いたことが多々あった。中でも一番目が点になったのは遺体の回収に関することだ。久美がたまたま一人で切り立った崖を登る訓練をしてい