ホームレス問題に対する社会的議論を巻き起こしたテレビドラマ「キャシー・カム・ホーム」('66)から50年以上にわたり、ケン・ローチ監督は労働者や社会的弱者に寄り添う作品を撮り続けてきた。最新作『家族を想うとき』を通じて彼が憤慨しているのは、「働く貧困層」である非正規雇用の実態だ。 ※この記事は、2019-12-01 発売の『ビッグイシュー日本版』372号からの転載です。 「ゼロ時間契約」の非正規看護師 トイレ休憩さえ難しいドライバー 「これは多くの人が存在を知っているにもかかわらず、誰も語ろうとしない物語です」。83歳となったケン・ローチは、最新作『家族を想うとき』についてこう話す。ストーリーの着想を得たのは、前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』の制作途中だったという。脚本家ポール・ラヴァティとともに取材したフードバンクで、出会った人の多くが就業していることに気づいたことがきっかけだった。