「すべての働く者のために……」。春闘を控え、連合の「春季生活闘争中央討論集会」であいさつする芳野友子会長には、働く者の代表として期待がその肩にかかる=東京都荒川区で2021年11月2日、大西岳彦撮影 東京駅を見下ろす丸の内ビルディングの最上階にある高級イタリアンレストランで、今夏のある夜、1組の男女が向かい合っていた。ものづくり産業労働組合「JAM」会長の安河内(やすこうち)賢弘さん(49)と、JAM副会長の芳野友子さん(56)。安河内会長は抑え気味の声で切り出した。「芳野さんを連合会長に、という話がある」 芳野さんは言葉を失った。連合会長の選出を協議する立場にある安河内さんからの呼び出しだったが、「議論の経過を教えてくれるのかな」という程度に考えていたからだ。自らが主役に躍り出る打診に「寝耳に水。本当の本当にびっくりした」と振り返る。 驚くのも無理はない。1989年に結成された「連合」は