「御用聞き」に対するニーズが拡大している理由は簡単だ。「家族で助け合う」ことが困難になっているからである。そこで、第三者の手を借りる必要が出てくる。 まず、「家族」がいない人がいる。身寄りのない高齢者をはじめ、単身者は増える一方である。さらに、様々な事情により、「近くに住む家族」がいない人がいる。これも事実上の単身者といえるだろう。 また、冒頭で少し触れたように、高齢化などに伴って、医療や福祉などの支援が不可欠となり、それらの仕組みがないと「家族」そのものが維持できないといった問題が深刻化している。いわゆる「老老世帯」における「老老介護」が典型だ。 以上のような状況に追い打ちをかけているのは、地域そのものの分断と孤立化の進行である。 一昔前であれば、ご近所付き合いが活発で、銭湯などの社交場があり、世話焼きおばさん・おじさんが必ずいた。このような生活環境がすでに衰退してしまったため、一人ひと
いま、圧倒的に「処方箋」が足りない 今まで述べてきたように、「子ども食堂」は、子どもの貧困対策でもあり、地域の拠点づくり、コミュニティづくりという側面もある。 そもそもが、「○○が子ども食堂である」という定義が明確にあるものでもないし、何らかの認可や免許があるものでもないわけで、それぞれが自分たちなりの「子ども食堂」をおこなっているに過ぎない。 しかし、ここ数年のあいだに2200ヵ所まで拡大したことは、逆説的に言うと、子どもの貧困への関心や地域のなかでの居場所づくりの必要性について、多くの人が関心を持ち、何かしたいとアクションを起こしたことの証明でもある。 子ども食堂は、ある種の「絆創膏」である。傷ついている人がいたら、誰しもがすぐさま自分ができることで手当てをする、したいと思うのと同じだ。 しかし、それはあくまで緊急時の手当であり、医師や看護師などの医療従事者ではない「ふつうの人」ができ
<大阪の西成で調査や支援活動に携わってきた社会学者による『貧困と地域』で知る、スラムとドヤの違い、知られざる釜ヶ崎(あいりん地区)の姿> 『貧困と地域――あいりん地区から見る高齢化と孤立死』(白波瀬達也著、中公新書)の著者は、長年にわたり大阪の西成で調査や支援活動に携わってきたという社会学者。自身が就職氷河期を通過してきた「ロスト・ジェネレーション」であるため、貧困問題には当事者感覚があったのだという。 そこで"漠然とした問題意識"を背景としてホームレス問題を研究対象に定め、あいりん地区でフィールドワークを実施するようになった。そうした経験を軸としたうえで、同地の貧困問題を検証したのが本書だ。 本書は、あいりん地区を通じて、「貧困の地域集中」とそれによって生じた問題を論じるものだ。あいりん地区の歴史的背景を踏まえ、この地域が被ってきた不利を明らかにし、それに対してどのようなセーフティネット
マムハウスのリビングでくつろぐ母子。母親は「娘と2人きりだと煮詰まる。人の気配があるのがうれしい」と語る シングルマザー向けのシェアハウスが広がりつつある。母親同士で子育てを助け合えたり、就職支援などの独自サービスが人気を集めたりする一方、経営難で撤退した施設もある。ひとり親の孤立や貧困を改善する手段の一つとなりうるか。現状と課題を取材した。 ●悩みまとめて解決 「お先に失礼します!」「また明日よろしく」。千葉県流山市のシングルマザー専用シェアハウス「マムハウス」に住むアヤノさん(32)=仮名=の職場は、家から徒歩0分だ。平日の午後5時半、マンションの1階部分にある洗濯代行店から2階の自室に戻って荷物を置き、長男(3)の保育園のお迎えに行く。 洗濯代行店の店長は、マムハウスオーナーで不動産業を営む加藤久明さん(45)。所有する駐車場に3階建てマンションを新築し、昨年10月にマムハウスをオー
今後ますます貧しい高齢者が増えそうだ。18年後の2035年には、高齢者世帯の約3割にあたる562万世帯で収入が生活保護の水準を下回り、貯金も不足する恐れがあるという。日本総合研究所が、5月17日に発表した「生活困窮高齢者の経済的安定に向けた課題」で論じた。 それによると、562万世帯のうち394万世帯は収入が生活保護の水準未満で、貯金が600万円に満たない「生活困窮高齢者世帯」。生活に足りない分を貯金でやりくりしているうちに残高が不足し、困窮する可能性が高い。 残りの167万世帯は「生活困窮予備軍」だ。収入が生活保護の水準を下回るが、600~900万円の貯金がある世帯などがここに含まれる。病気で入院したり、平均寿命よりも長生きするといった「不測の事態」に見舞われると、貯金が足りなくなって「困窮世帯」に転落する恐れがある。 1950年代~1960年代生まれは「老後生活に必要な資金を十分に蓄積
子育てをしながら、1人で翻訳会社を営む女性が香芝市にいる。市内に移り住んで10年。困った時には近所の母親たちと助け合いながら過ごしてきた。現在、市教育委員を務めており、「子育て中の母親を少しでも支援できれば」と話す。 同市穴虫の石原田明美さん(50)は2005年、当時住んでいた大阪で翻訳会社「English Hands(イングリッシュハンズ)」を立ち上げた。主に企業などから頼まれる文書の翻訳を請け負う。自宅で、インターネットを使ってやりとりする。 大阪市出身。大学時代は国際政治を学び、カナダに留学した。スイスで6年過ごし、銀行員としても働いた。帰国後、教育関連会社に勤めたこともあるが、将来の子育てを考えた時、時間に縛られずに働ける環境がいいと考えた。 起業後に結婚。07年に香芝市…
せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。http://seidansha.com News&Analysis 刻々と動く、国内外の経済動向・業界情報・政治や時事など、注目のテーマを徹底取材し、独自に分析。内外のネットワークを駆使し、「今」を伝えるニュース&解説コーナー。 バックナンバー一覧 一軒家やマンションの一室を複数人で共有して暮らす「シェアハウス」。リアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ/2012年~)の影響もあり、「シェアハウス=オシャレ物件」というイメージを抱いている人も多いだろう。しかし実際には、経済的な理由からやむを得ず選択し、その生活から抜け出せない“シェアハウス難民”もいるという。困窮した若者が集うシェアハウスの実態と、その背景とは(取材・文/松原麻依[清談社]) 都内在住で手取り1
「がんの治療を受けていることを、今日まで誰にも言わずに頑張ってきました。おかげさまで体は生きています。でも日に日に寂しさが募り、生きている実感が持てずにいます」 13年前、当院に相談部門を開設して間もない頃に出会った患者さんの言葉です。発病から数年間、がんであることを周囲に伝えるすべを知ることなく、知人や地域活動とのつながりを徐々に失いながら過ごしてきたということでした。 解決策を知らない、情報を得られないということが、時に生きる意味をも揺るがすものとなることを痛感させられました。それとともに同じつらさを抱える人がこれ以上増えてほしくない、という気持ちが強く心に刻まれた瞬間でした。
9月末についに完成した「ソーシャルデザイン白書2016」。greenz.jpを寄付で支えてくださる「greenz people」にだけお届けしていますが、読者のみなさんにも一部をお見せします!まずは編集長・鈴木菜央が書き下ろした第1章「ソーシャルデザインの歩み」をお楽しみください◎ 2011〜2016 コミュニティ、暮らしから、まちづくり 東日本大震災から1週間後の岩手県上閉伊郡大槌町 2000年以降のソーシャルデザインを振り返るとき、もっとも大きな転換点になったのは2011年3月11日の東日本大震災と、それに続く福島原子力発電所事故ではないかと思います。このとき、greenz.jpの月間読者数が突然、これまでの2倍の月間12万人を超えました。 なぜ突然greenz.jpを読む人が増えたのか?僕は、3.11をきっかけに、2つのことが明白になったからではないかと思っています。ひとつは、自分の
子どもの貧困対策に取り組む京都のNPO法人が、支援者向けの手引を作った。「子ども食堂」などの支援が広がる中、「みんなの気持ちがバラバラ」「お金ってどう集めるの?」といった疑問が出てきたとき、考えるための資料として活用してほしいという。 手引のタイトルは「子どもの貧困対策に地域で取り組む 支援者のアクションサポートBOOK~とらのまき~」。京都市山科区のNPO法人山科醍醐こどものひろばが作った。 同NPOは全国から視察が来る老舗的存在。2010年に子どものための夜の居場所をつくり、2カ所で毎年20人の小中学生を支援。学校と連携し、学習支援もする。培ったノウハウを他の団体にも生かしてほしいと手引を作った。 困りごとを抱えている子を見逃さないため、手引では「子どもを見る10の視点とその理由は?」として、服装や爪、目線や表情、遊び方などポイントとなる点を例示した。 「あなたの活動はどこを目指す…
高齢化や核家族化と裏表で進む孤独死。本人が周囲にSOSを出さない場合など、支援の難しさも浮かぶ。ベストセラーとなった「下流老人」で、高齢者の孤立や貧困問題に迫った、NPO法人「ほっとプラス」(さいたま市)代表理事の藤田孝典さんに、孤立に陥らないための備えを聞いた。 ――高齢者の孤立が問題化してきた背景とは。 「かつては家族が高齢者を支える余裕があったが、今は家族機能が弱まり、支えきれなくなっている。共働きが増え、非正規雇用が広がり、若者の所得は下がる一方。親をみる余裕が現役世代にはないのに、社会保障はそれを支えきれていない」 ――団塊の世代が高齢期を迎える中、今後さらに深刻化すると考えますか。 「中間層や下層に対する介護サービスがきわめて弱い。今後、介護ニーズがさらに高まったときに、一家心中や介護殺人の事例は後を絶たなくなるのではないでしょうか。自炊能力が高くなく、家事労働に慣れていない男
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