●進まぬ時間延長 「みんなで食べるとおいしいねえ」。玄葉チエ子さん(75)はご飯、みそ汁、目玉焼きの朝ご飯を平らげた。福島県いわき市のデイサービス「人生(いきがい)の里」(定員35人)。昨年4月から始めた朝食サービスで7人がテーブルを囲む。映画「ティファニーで朝食を」よろしく「デイサービスで朝食を」がその名前だ。本来は午前9時半スタートだが9時からに前倒しして30分間を朝食に充てる。兼本まゆみ主任は、朝食を食べず、薬も飲んだかわからない利用者がぐったりしているのを目にして早めの朝食提供を提案した。 玄葉さんは、直前の食事や薬の服用も忘れる。親族が自宅で見る水曜、日曜以外の週5日、デイサービスが朝食と服薬管理を担う。兼本主任は「本人、家族、職員も安心できる」と話す。介護保険制度の適用外だが1回180円と低価格に抑え、現在いる職員でやりくりし対応する。
2017年、介護現場に再び異変が起きている。リーズナブルな価格が人気の特別養護老人ホーム、略して「特養」。そして、注目を集めつつある在宅介護。2つの介護現場の最新事情から、高齢者福祉の未来を探る。 イメージと裏腹に「空いている」特養 2016年、厚生労働省の事業の一環で、みずほ情報総研がある調査に乗り出した。特養の入所申込者は全国で約52万人(調査実施時の数値。最新調査では入所要件が厳しくなり約37万人に減少)といわれる一方で、空床の存在が見え隠れする。その実態を探るためだ。空床が目立つ施設は、比較的開設後間もない施設に見られるという声も聞かれているため、開設10年以内の1151施設(うち有効回答550件)に対してアンケートを実施し、2017年3月に「特別養護老人ホームの開設状況に関する調査研究」として発表された。 それによれば、2016年11月時点で、全国の特養で「満室」と答えたのは73
千葉市の特別養護老人ホーム・サンライズビラで自己負担が倍以上になり、いったん退所した女性に話しかける生活相談員の榎本達也さん=千葉市若葉区で、斎藤義彦撮影 <くらしナビ ライフスタイル> 「なぜ負担が倍になるのか」。千葉市の特別養護老人ホーム・サンライズビラの相談員、榎本達也さん(47)は首をかしげる。入所中の女性(76)は昨年8月、月約7万5000円の自己負担が一気に月約15万8000円に膨れ上がった。「ユニット型」と呼ばれる個室を利用していたが「決して金持ちではなく、中の上程度」の家庭だ。昨年8月、国は、食費、居住費の軽減措置を変更。遺族・障害年金を初めて条件に加え、他の所得と合わせて一定額を超えると軽減措置が縮小されるようになった。女性の場合、社会人の孫が住居を自宅に戻した影響もあり、軽減措置がなくなり負担が急増した。家族は仕事で介護できない。 相談を受けた施設は女性をいったん退所さ
県は1日、若年性認知症の患者やその家族、勤務先などの関係者への支援活動を行う「若年性認知症支援コーディネーター」を公益社団法人「認知症の人と家族の会」埼玉県支部(さいたま市北区)内に配置した。県内では初の試みで、相談窓口も開設。県の担当者は「一人でも多く相談してもらい、オーダーメイドの支援をしていきたい」と期待している。 県地域包括ケア課によると、若年性認知症は18歳以上65歳未満で認知症を発症することを指し、厚生労働省が平成21年に発表した推計によると、平均発症年齢は約51歳。推計を基にした県の試算では、県内には27年1月1日時点で約2千人の患者がいるとみられる。 発症時は仕事や子育ての「現役世代」に当たり、男性が患者となる傾向にある。患者自身の就労に支障を来したり、生活費や子供の教育費の問題が生じるという。 27年に内閣府などが策定した新オレンジプランで各都道府県で29年度中の配置が目
元気なうちに親の意思を聞いておく ──高齢でも体は丈夫、自身の認知症など疑ってもいない親に、子はどう切り出せばいいのでしょう。 まず、元気なうちに親の意思を聞いておくことが大事です。介護が必要になったら在宅か施設か、どこで介護されたいか。もう1つは延命を望むか望まないか。これを聞いておかないと絶対に後々後悔します。 そして親が75歳になったら、要介護認定の検査を受けてもらうことを勧めます。役所から知らせが来たとか、受診が義務化された、健康具合を見に係の人が来るとか、ウソも方便。何とか要介護認定を受けてもらうのが第一歩です。65歳の誕生日前に送られてくる介護保険証持参で役所の介護保険課窓口に行き申請、受理されたら自分が立ち会える日に認定調査員に来てもらって、要介護認定の調査を受けます。1カ月後、要介護度が書き込まれた介護保険証が送られてくる運びです。 ──すでに認知症、介護の本を多く書かれて
岐阜市茜部(あかなべ)本郷2丁目の竹内勝利さん(73)宅で17日、住人とみられる男女3人の遺体が見つかった問題で、勝利さんの長男の利和さん(43)とみられる遺体は、死後から1週間程度過ぎていることが、捜査関係者への取材でわかった。遺体はやせ細っており、岐阜県警は餓死の可能性もあるとみて調べる。 家に住んでいたのは、勝利さんと妻の由美子さん(71)、利和さんの3人。捜査関係者によると、南西の部屋で見つかった夫婦とみられる遺体は、肩を寄せ合うようにして仰向けで倒れており、ともに死後1カ月程度とみられるという。 また、市地域包括支援センターの職員が9、10月に竹内さん宅を訪れ、高齢者向けの介護保険サービスを案内したところ、勝利さんが利用を拒否していたことがわかった。 センターや市によると、竹内さん宅の地域の交番から「ご近所トラブルなどがあるので、市も関与してほしい」と依頼を受け、センターの職員が
家族らによる高齢者虐待と認定された件数は、年々増え続けている。厚生労働省の調査では、二〇〇六年度に一万二千五百六十九件(通報一万八千三百九十件)だったのが、一四年度には一万五千七百三十九件(同二万五千七百九十一件)になった。 増加の背景には、〇六年度に施行された高齢者虐待防止法がある。高齢者の人権を守るため、虐待と疑われる事例を発見した人に、市町村への通報を義務付けた。 端緒となるのは「体にあざができている」「頭にこぶがあった」などが多い。ただ、高齢者の骨や皮膚は若者よりはるかに弱く、自室で転んだり、頭をぶつけただけでも青あざやこぶができたりする。介護の現場ならよくあることだが、知らないと「こんなひどい傷は、自分でつけられるわけがない」と考えてしまう。
アーバン福祉用具が開発した機器「iTSUMO」。同社が制作した専用カバーで靴の甲やつえに装着することができる=広陵町 認知症による徘(はい)徊(かい)で高齢者が行方不明になる事案が相次ぐ中、奈良県広陵町で福祉用具の貸与事業を手がける「アーバン福祉用具」が、徘徊時に所在を知らせるGPS機能付き感知機器「iTSUMO」を開発した。靴やつえなどに装着して使用する。県内ほぼ全域と、大阪、兵庫、熊本の一部市町で介護保険が適用できるといい、担当者は「介護する家族の手助けになれば」としている。 機器はもともと、携帯電話会社が子供の誘拐防止に開発した小型のGPS端末。同社は、高齢者の徘徊による行方不明防止に役立てようと、独自仕様に開発した。 徘徊が始まった際、機器が歩く振動を感知することで、あらかじめ登録した連絡先5件に通知メールを自動配信。その後も徘徊が続くと、所在を知らせる地図情報を2分ごとに送る。利
横浜市は4月1日から、育児と介護を同時に行う「ダブルケア」の負担軽減などを目的とし、特別養護老人ホームの入所決定基準を見直す。家族がいる場合でも、育児や就労、入院などの理由で介護を受けることが困難な際は入所しやすくするためで、市によると、ダブルケア対策で特別養護老人ホームの入退所指針を見直すのは全国でも珍しいという。 入所の優先順位は、入所希望者の「要介護度」や「本人の状況」「介護者である家族の状況」などを点数化し、合計点が高い順に決定。現行基準では、身寄りのない独居の要介護者が最も優遇されている。 新基準では、「介護者である家族の状況」について点数を見直す。同居の家族が育児や仕事で介護ができない場合の点数を、従来の8点から独居者と同じ15点に引き上げるほか、家族の入院などで1人暮らしの場合も、10点から15点に変更する。 要介護度がより直接的に優先順位に影響することとなり、林文子市長は「
イラスト/藤田としお 2013年以降、65歳以上の人口が3000万人を超え、4人に1人が「高齢者」となった日本(総務省統計局/2016年1月現在)。介護に関する人手不足のニュースなど、たびたび話題になっています。祖父母をはじめ、自分の親の介護を考え始めた、という人も少なくないでしょう。そこで、いざ介護をする立場になった時に役立つアプリを紹介します。 まずは、初心者向け。自宅周辺にどのような介護施設があるのか知っていますか? 「介護事業所ナビ」は、全国の介護サービス事業所を検索することができる厚生労働省の公式アプリ。老人ホームだけでなく、訪問介護やデイサービス、福祉用具の貸与など、介護サービス事業所のサービス内容や電話番号を調べられます。一人で背負いこまず、周囲の助けを借りることを覚えることも介護する側の大切な心構えですね。 そして、情報サイト「けあとも」の公式アプリ「介護の最新情報が集まる
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