弱視などの、視覚に障害がある子どもでも読みやすい教材をと、文字や図表を拡大した教科書を作っている。会の名前にある「エンラジスター」は「~を大きくする」という意味の英単語に由来する。 会が作った拡大教科書を見ると、通常の教科書で半ページほどの図表が、見開きで展開されていた。「薄い色の文字が分からない」「行間が詰まっていると読みにくい」など、何が見えにくいのかは人によって異なる。本人や学校の先生と相談を重ねて、単に字を大きくするだけではなく、文字や線の色使い、レイアウトにも気を配る。 2006年、山口県下松市に誕生した。これまでに約40冊の教科書の拡大を手がけてきた。文部科学省から依頼を受け、教科書会社から送られてきたデータを元に作業に取りかかる。1冊の教科書の編集には5カ月ほどかかるといい、8人の会員で手分けして作業を進める。 「先生の中にも『拡大教科書…
目が不自由な子供たちに、泳ぐ魚に直接触れてもらおうと、県立和歌山盲学校(和歌山市府中)で16日、アユのつかみ取り体験が行われ、子供たちがいけすの中に入って楽しんだ。 県内水面漁業協同組合連合会(紀の川市桃山町)の協力で実施。体長約15センチのアユ150匹が約2・5メートル四方のいけすに放され、子供たち16人がつかみ取りに挑戦した。 アユがいけすに放たれると、子供たちは夢中でアユを追いかけ、「捕まえた」と笑顔を見せていた。20匹のアユを捕まえたという岩上航君(10)は「アユがぬるぬるしていて楽しかった」と笑顔。坂口勝弘校長は「目が不自由な子供たちにとって、触れて学ぶ機会は重要。こういう機会をもっと作っていきたい」と話していた。
くりぬいた板の教材や発声訓練用の模型などを見る岡本明・筑波技術大名誉教授(左)と菊島良治・山梨県立盲学校校長=甲府市下飯田2の同校で2016年10月、後藤豪撮影 目と耳の両方が不自由な盲ろう児の教育を1950~60年代に、国内で初めて系統的に実践した山梨県立盲学校(甲府市)で、当時の資料のデータベース化が進められている。教材・教具、授業記録のほか、寮での生活記録などが詳細に残り、現在の盲ろう児教育の基礎となった先進的な取り組みの様子が分かる。劣化が進んでおり、関係者は「貴重な記録を後世に残したい」と話している。【後藤豪】 「はに わたを いれて きれいに する」「ぴんせっとを はえ(へ) いれる」
式典で挨拶する宍戸理事長独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、免許状保有率が低い視覚障害・聴覚障害の教育領域で、インターネットを利用した免許法認定通信教育を10月に開講した。それに伴い、10月19日、神奈川県横須賀市にある同研究所で、免許法認定通信教育開講記念式典を開催。特別支援学校教員についての政策動向や免許法認定通信教育事業の概要が説明された。義家弘介文科副大臣はビデオメッセージで、同通信教育への期待を述べ、特別支援教育に力を入れ続けていく意向を示した。 同研究所の宍戸和成理事長は「特別支援学校教諭の免許状取得率向上を図ることで、特別支援教育の充実にも寄与できると思っている」と述べた。 文科省が平成28年8月に公表した「平成27年度特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有状況等調査の結果について」によると、昨年5月1日現在、特別支援学校教員(6万5559 人)のうち、当該障害
盲学校では国内5番目の開設で、早くから視覚障害者の教育に取り組んできた県立岐阜盲学校(岐阜市北野町)の創設者、森巻耳(けんじ、1855~1914)について、学校の児童生徒らがよりよく知ることができるようにと、同校が伝記を発行した。自らも失明しながら学校の開設に奔走した姿が、子どもたちにもわかりやすく描かれている。 巻耳は1855年、金沢市生まれ。87年に現在の岐阜高校の英語などの教師として赴任したが、翌年、33歳で眼病を患った。91年に岐阜、愛知などで7千人以上の死者が出た濃尾地震を機に視覚障害者の支援に力を注ぐようになり、94年に岐阜盲学校の前身「岐阜聖公会訓盲院」を開院し、初代校長となった。このころには巻耳自身も、両目ともに失明していた。 そんな巻耳の生涯を伝えようと、子ども向けに伝記をまとめたのが同校の図書館司書、小沢純子さん。1994年に発行された「岐阜盲学校百年史」などで巻耳の生
全国の特別支援学校の今年度の学校数は1106校で昨年度から8校減った。一方、在学者は過去最高を更新して13万7939人に上ることが、文部科学省が5月1日時点でまとめた学校基本調査(速報)で分かった。 特別支援学校を種別ごとにみると、「知的障害」が昨年度から6校増えて538校(在学者8万7322人)となり最も多い。複数の障害種別を組み合わせた「その他」は昨年度から8校減の232校(同3万7879人)。「視覚障害」は昨年度と同じ63校(同2050人)。「聴覚障害」は1校減の86校(同4857人)。「肢体不自由」は2校減の129校(同3556人)。「病弱・身体虚弱」が3校減の58校(同2275人)。 なお、全国盲学校長会は6月、視覚障害者に対する教育を行う特別支援学校は全国67校で、在籍者は2863人(昨年度比138人減)と発表している。
約70年の歴史を持つ大阪府立視覚支援学校高等部(大阪市住吉区)の音楽科は3月9日、3年の辻本実里(みさと)さん(18)の卒業を最後に幕を閉じる。視覚障害がある生徒のための音楽教育機関として、これまで100人以上を送り出してきたが、少子化や就職難から同科の入学者は減少。過去6年間で2人にとどまり、府は来年度の募集をとりやめた。最後の生徒となった辻本さんは5日のコンサートで、感謝の思いをソプラノの歌声に込める。(嶋田知加子) ◇ ◆夢はプロの声楽家 卒業式を目前に控えた3月2日、同校の小・中学部と高等部本科音楽科が合同で行う最後の音楽交流授業が音楽室で行われた。 辻本さんは「早春賦(ふ)」「野ばら」「歌よありがとう」など5曲を歌った。じっと聞き入った児童・生徒ら約40人を前に、田下(たした)恵子教諭は「こんなすばらしい歌が聴けるのは幸せなこと。この歌声を覚えていてください」と語りかけた。 辻本
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