総務省は高齢者や障害者が情報通信技術(ICT)を使って効率的に仕事や生活ができるよう包括的に支援する政策パッケージを2019年度に打ち出す。障害者の個性に応じて仕事を割り振る人工知能(AI)や、職場や街中のバリアフリー情報の公開などを想定。野田聖子総務相が近く立ち上げる有識者懇談会で具体策を詰める。個別の施策の費用は19年度予算の概算要求に盛り込む。例えばAIで工場の複雑な生産工程を細分化し、
鹿児島市の住宅地で2018年5月、新しいスタイルの賃貸マンションが誕生した。その名は「ツクルUD」。入居者が壁紙を張り替えたり、棚をつけたり、自分の好きなようにカスタマイズして世界にひとつだけの部屋を「ツクル」ことができて、原状回復は原則不要。さらに、車いす利用者など障がいのある人でも使いやすい「UD」(ユニバーサルデザイン)になっていることが特徴だ。 このマンションを手がけたのは、鹿児島市で不動産業を営む有限会社窪商事。同社代表の窪勇祐さんが車いすの男性と出会ったことから、「ツクルUD」プロジェクトが始動した。 3年ほど前のこと。「僕らが住める部屋ってないんでしょうか?」。車いすで生活する矢野剛教さんのこの問いかけに、16年にわたり不動産に携わってきた窪さんは「返す言葉が見つからず、自分の無力さを感じ、すごく悔しかった」と振り返る。車いすを利用している人は、家族と暮らしたり、古い住宅を購
日本テレソフト(東京都千代田区)は、点字と墨字を同時に印刷できるプリンターで北米市場に進出する。墨字は点字に対し、普通に書かれた文字や印刷された文字。先進国ではバリアフリーな環境を整えるために、申込書や申請書、請求書など各種書類の点字表示を義務付けるなど用途が多様化してきた。こうした書類や資料は、視覚障がい者と健常者の両者が利用することが多いため、同プリンターの北米市場への投入を決めた。 福祉機器販売を展開するカナダのヒューマンウエアと北米での販売代理店契約を結んだ。販売目標は初年度で50台。北米に販路を獲得することで、海外展開に弾みをつける。同社のプリンターは、点字と墨字とも約100カ国の言語に対応している。北米の金融機関や医療機関、通信キャリアなど幅広い業界に向けて、拡販する。 世界の点字プリンター市場規模は約4000台。金子社長は「現在(当社のシェアは)数%で、5年後には3割に引き上
視覚に障がいを抱える人も、健常者と同じように周辺の情報を得ながら町歩きできるようになってほしい。マイクロソフトの「Soundscape」は、そうした思いで開発が進められてきた。 そしてこのほど、4年間の開発を経て無料ガイドアプリ(iOS)をリリースした。スマホとヘッドフォンを使うことで、視覚障害者がリアルタイムに周辺の情報を得ることができるというものだ。 まずは米国と英国で利用可能となっている。 ・ビーコンの情報を受信 このシステムは、アプリをダウンロードしたスマホ、ヘッドフォン、そして店舗などに設置したビーコンで構成される。 アプリを立ち上げると、スマホがビーコンからのシグナルをキャッチし、それを元に音声で「右手にGAPのお店があります」「バス停は○メートル先です」などとユーザーにリアルタイムに情報を提供する。 つまり、私たちが町を歩く時、「カフェがある」「こんなところに大学のキャンパス
弁護士検索や無料法律相談などのサービスを運営する弁護士ドットコム。その弁護士ドットコムはアクセシビリティエンジニアを採用し、本格的にWebアクセシビリティの向上に乗り出したという。本連載では、弁護士ドットコムがどのようにアクセシビリティ向上に向けどのように実装していたのか、リアルタイムでお届けしていきます。初回の今回は、「狙い」を紹介します。 筆者は、アクセシビリティに関する著書もある元ビジネス・アーキテクツの太田良典氏。本題の前に、まずは「アクセシビリティ」について簡単に説明しておきます。 アクセシビリティは障害者に限った話ではない全盲の人もWebを使っているんですよ 私がこう言うと、「全盲の人がどうやってWebを使うの?」と驚かれることがあります。Webは実にさまざまな人が、さまざまな状況で利用しており、あまり知られていない使われ方をされていることもあります。たとえば以下のような使われ
「年齢とともに、相手の話している声が聞きづらくなる」-。そんな高齢者の悩みを解決しようと、話し掛ける側が言い換えや発声を工夫するバリアフリーの取り組みが注目されている。言い換え用の電子辞書が開発され、企業向け研修会も開かれている。難聴は認知症などのリスク要因とされており、「聞こえないから」と閉じこもりがちな高齢者の介護予防にもなりそうだ。 ◆適切な言葉探し 東京・羽田空港のソラシドエア東京支社。客室乗務員らを対象にした「聞き間違えない話し方講座」が開かれた。 「年を取って難聴になった人は音が濁って聞こえる場合があるので、大きな声を出すだけでは不十分。低い声でゆっくりと。言葉の言い換えも有効です」 講師を務めたのはパナソニック補聴器の光野之雄さん。「例えば『握手』と『拍手』、『佐藤』と『加藤』は紛らわしい。まず子音が聞き取りにくくなるからです。『手を握る』と言い換え、名前をフルネームにしてみ
ものが見えにくくなっている人や高齢者にとっての「見えやすさ」や「読みやすさ」とは何か。情報機器を駆使して、そんな問題に取り組んでいる研究室があります。超高齢化社会に対応した製品開発にも結びついています。 細長く、文字間にゆとり 2013年春、東京女子大現代教養学部人間科学科の小田浩一教授(56)の研究室を、スーツ姿の男性2人が訪れた。共同印刷(東京都文京区)情報メディア開発部の春本昌宏担当部長(当時)らはこう切り出した。 「銀行の利用明細や契約更新のお知らせなどの通知文書は、多くの情報を載せようとして文字が小さくなりがちで、高齢者が読みにくいという声があります。だれもが読みやすい書体を作るために協力していただけませんか」 小田教授の専門は、感覚、知覚、認知の実験心理学をもとにした視聴覚情報処理。ものが見えにくい人にとっての「見やすさ」「読みやすさ」を科学的に数値化し、条件や要素を見つける、
白杖(はくじょう)を携えて歩くのは全盲の人だけという誤解から筋違いの非難や疑問視をされることがあると、弱視などの視覚障害がある人たちが声を上げ始めた。「白杖=全盲とは限りません」と書いたストラップや漫画で理解を求めている。 福岡県宇美町の佐子真紀さん(49)は右目が見えず、左目も視力は0・3だが視野に欠損がある。1、2年前、白杖を携え、地下鉄の車内で文字を拡大したスマートフォンを見ていると、向かいに座る若者の会話が聞こえてきた。「見えてるんじゃない?」「うそつきやん」 こうした誤解を解くため今夏、「白杖=全盲とは限りません」と書かれたストラップを購入し、白杖に着けた。ストラップには「白杖の天使 はくたん」というキャラクターが描かれている。 このストラップは神奈川県秦野市の渡辺敏之さん(46)が手作りし、今年に入って販売を始めた。左目にわずかに見える視野があり、自身も2度、スマホを使用中に「
こんにちは、サイボウズ株式会社の小林です。前回は、身近な事例をもとに、Webアクセシビリティの概要を紹介しました。 お伝えしたとおり、元来Webアクセシビリティは、障がい者や特定の身体的特徴による困難を抱えた方への対応と捉えられてきました。しかし、Webアクセシビリティは本当にそのような方のため「だけ」の対応なのでしょうか。 執筆者紹介: サイボウズ株式会社 小林大輔 同社プログラマーとして、Webサービス「kintone」の開発を行う傍ら、社内外に向けて「Webアクセシビリティ」に関する啓発活動を行っている。 Webアクセシビリティが「みんな」に必要となる場面 まず、前回紹介した色に依存しない表現について言えば、色弱や色盲などのユーザだけではなく、晴眼者にとっても重要になる場合があります。典型的な状況は、Webページを白黒印刷するときです。白黒印刷では色で表現された情報が失われてしまうた
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