死を目前にした終末期のがん患者らを精神的に支えようと、医療現場に僧侶が入る「仏教緩和ケア」が日本と台湾で注目されている。医師や看護師に代わって聖職者が患者の苦悩を和らげるケアはキリスト教に由来するホスピスで行われてきたが、日台では、自国民になじみの深い仏教精神の導入を模索。台湾はその先進地域とされ、日本の医療・宗教関係者が視察や研修に訪れているという。その視察に同行し、意義や今後の取り組みの行方を探った。(小野木康雄) 僧侶が常駐する病棟 「ありがとう。うれしいよ」。ベッドに身を横たえた台湾人の男性(86)は日本から来た僧侶の手を握り返すと、戦時中に学んだというよどみない日本語で礼を言った。 今年1月、台北市中心部にある台湾大付属病院6階の緩和ケア病棟。男性は膵臓(すいぞう)がんで余命わずかと診断されていて起き上がれなかったが、日本統治下で過ごした少年時代を懐かしんだのか、軍艦マーチや桃太
死の意味を説き、死者を供養する僧侶の元には多くの霊魂譚が寄せられる。本章では僧侶1335人に対するアンケートや聞き取り調査から、霊的現象の事例を紹介し、その傾向、メカニズムを解説する。その前編。 栃木県佐野市にある浄土宗・一向寺の住職、東好章(48)は静かに話し始めた。 「うちの寺では檀家さんからの除霊や鎮魂をお受けしています。つい先日も、ある方が『最近、体の具合が悪い。家の仏壇を粗末にしていたから、ご先祖様の怒りを買ったに違いない。供養して欲しい』とおっしゃる。自宅にお邪魔すると確かに、仏壇は何年も放置された状態でホコリが被っていて、何代前かわからないような古い位牌がいくつも置かれている。私はきちんとお掃除して、どの霊位が祀られているのかを確認し、回向をして差し上げました。檀家さんは、『おかげで(体の具合が)良くなった』と言っておられたので、回向には一定の効果があったのかな、と思います」
1月中旬、米トランプ政権は、医師や看護師などの医療従事者の宗教的または倫理的な権利を守るため、医療従事者が患者の人工妊娠中絶などの医療行為を拒否できる権利を容認する計画案を発表した。 その結果、保健福祉省(HHS)の公民権局に「良心と宗教の自由部門(Conscience and Religious Freedom Division)」が新設。この「治療拒否権」が実行されれば、医療従事者がトランスジェンダーの患者の治療を拒否できる道につながる公算が強い。 世論調査では8割以上が医療従事者が反対 トランプ政権の計画に対する国民の反応や意識を知るために、医療・健康ニュースサイト「Health Day」は、調査会社のHarris Poll社に委託し、1月26~30日にわたり、米国在住の18歳以上の男女2055人を対象にオンライン調査を実施した。 その結果、10人に8人以上の医療従事者が「良心または
災害・医療現場で悲嘆や苦悩のケアに当たる宗教者の専門職「臨床宗教師」を養成している龍谷大大学院で平成29年度、新たに13人が研修を終えた。26年度に開講して以来、4年間の修了生は通算45人となった。 修了生らは昨年5〜12月、東日本大震災の被災地や緩和ケア病棟のあそかビハーラ病院(京都府城陽市)などで約150時間の実習を受け、相手の話に耳を傾ける「傾聴」や、異なる宗教間で協力する能力などを身につけてきた。 修了式が京都市下京区の大宮学舎で17日行われ、東北大大学院の谷山洋三准教授(臨床死生学)が、3月に始まる臨床宗教師の資格認定制度について講義。「布教を目的としないことを定めた倫理綱領を守ることが大切だ」と述べた。 東日本大震災の被災者との交流が最も印象に残ったという兵庫県尼崎市の浄土真宗本願寺派僧侶、天崎仁紹さん(24)は「悩みや苦しみを心で受け止める僧侶になりたい」。比叡山で修行中の天
ハンセン病患者の救済に尽力した鎌倉時代の奈良の僧・ 忍性 ( にんしょう ) (1217~1303年)の偉業を知ってほしいと、奈良の若手僧侶が生誕800年となる16日、ゆかりの国史跡「 北山十八間戸 ( きたやまじゅうはっけんこ ) 」(奈良市川上町)で記念法要を営む。 忍性は現在の奈良県三宅町生まれの僧侶。当時は僧侶からも忌避されていたハンセン病患者の療養施設を奈良や鎌倉に建て、歩けない患者を背負って送り迎えしたとの記録も残る。北山十八間戸は、忍性が患者の宿舎として建てた。 法要を企画したのは、北山十八間戸の北約400メートルにある般若寺の副住職、工藤 顕任 ( けんにん ) さん(31)。「偉業をなした僧なのに、あまり知られていない」と感じ、「忍性は慈悲を説くだけではなく、先頭に立って行動した。自分もできることを」と思い立ったという。
映画『地の塩 山室軍平』が、10月から東京・新宿武蔵野館ほか全国で公開される。 同作は、社会福祉の先駆者と称され、日本人初の救世軍士官となった山室軍平を描いた作品。1872年に岡山で生まれた山室は、1889年にキリスト教の洗礼受け、1895年に救世軍に参加した。67歳で没するまで、生涯にわたって社会福祉運動に身を捧げた。1915年に藍綬褒章を受章。 山室役を演じるのは映画監督としても活動する森岡龍。妻・山室機恵子役を我妻三輪子、岡山孤児院の創設者で「児童福祉の父」といわれる石井十次役を伊嵜充則、同志社大学の創設者・新島襄役を辰巳琢郎が演じる。監督は『9/10 ジュウブンノキュウ』の東條政利。 森岡龍のコメント 宗教家、かつ、実在の人物を演じさせて頂くことは初めての経験で、ありがたい反面、背筋が伸びる思いでした。倒れては立ち上がり、揺らいでは立て直す。その不屈の精神と熱量を、山室軍平さんから
日本最大級の伝統仏教教団、浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺、京都市下京区)が、病院や高齢者施設で心のケアに当たる専門僧侶の養成に今年秋から乗り出すことが5日、関係者への取材で分かった。病院や大学などと連携し、医療・介護の基礎知識や技能を教える。雇用する施設には人件費の一部を助成する取り組みも始める。 団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025(平成37)年問題」を見据え、生死にまつわる苦悩や悲嘆を抱える人が増えると見込まれることから、病床などで寄り添う専門僧侶の養成が仏教教団としての有力な社会貢献活動になると判断した。 計画では、15日間の基礎研修と3カ月間の臨床実習を実施。医師や薬剤師、介護職員らが講師となり、がんの特性や医療用麻薬などに関する知識と生活支援技術を僧侶に身につけてもらう。龍谷大が実施する「臨床宗教師」の研修プログラムと単位互換も行う。
米国の福音派信者の10人に4人が、医師による末期患者の安楽死や自殺ほう助を肯定的に考えていることが、米福音主義世論調査機関「ライフウェイリサーチ」の調査で分かった。 ライフウェイリサーチは任意に選んだ全米千人の回答者を対象に、9月27日から10月1日にかけてオンライン調査を行った。調査の結果、プラス・マイナス3・1パーセントの誤差範囲で、69パーセントが「末期患者が自らの命を終わらせることを、医師が援助することは認められるきだ」という見解にある程度同意しているか、はっきりと同意していることが明らかになった。 「患者が痛みを伴う死にゆっくりと向かっている場合、米国人は(安楽死・自死するか否かの)選択を望みます」と、ライフウェイリサーチのスコット・マコネル常任理事は声明の中で述べた。「死に向かう援助を求めることは、倫理にかなった選択だと多くの人が考えています。自然死するまで苦しむことが唯一の選
かつて国のハンセン病隔離政策に協力した真宗大谷派。東海地方の住職たちが教団の負の歴史に向き合い、療養所訪問と入所者との交流を四半世紀にわたり続けている。らい予防法廃止とそれを受けた教団の謝罪から20年。今なお出身地を明かせない人もいて、隔離の爪痕はあまりに深い。 「南無阿弥陀仏……」 骨になっても療養所を出られなかった人たち、3700人余りの遺骨が眠る納骨堂前で念仏が唱えられた。10月下旬、東海地方の住職や市民でつくるハンセン病学習グループ15人が、国立療養所・長島愛生園(岡山県瀬戸内市)を訪れた。納骨堂は園がある島の高台にある。 園内に1泊2日する日程では、21歳で愛生園に隔離され、今も園で暮らす津市出身の田端明さん(97)の講話を聞いたほか、島に隔離した患者の消毒や身体検査をした収容所などの施設を巡った。夜の酒席では入所者4人と夜更けまで懇親を深めた。 今回で24回目。愛知県西尾市の大
宗教倫理学会第17回学術大会で、「赤ちゃんポスト研究の最前線―生命保護と権利擁護の狭間で」と題して講演する柏木恭典氏・千葉経済大学短期大学部こども学科准教授=9日、関西大学(大阪府吹田市)で 宗教倫理学会第17回学術大会が9日、関西大学(大阪府吹田市)で開催され、公開講演として、柏木恭典氏(千葉経済大学短期大学部こども学科准教授)が「赤ちゃんポスト研究の最前線―生命保護と権利擁護の狭間で」と題して、赤ちゃんポストの発祥国であるドイツの現状や日本の課題について発表した。柏木氏は、教育学、児童福祉学の研究者で、『名前のない母子をみつめて―にほんのこうのとりのゆりかご ドイツの赤ちゃんポスト』(共著、北大路書房、2016年)などの著書がある。 赤ちゃんポストは、日本では2007年5月、慈恵病院(熊本市)に「こうのとりのゆりかご」として初めて設置され、以後9年間に計125人の赤ちゃんが預け入れられ
患者や家族の「心のケア」に当たる僧侶が働いている三菱京都病院(京都市西京区)の医師による講演会が28日夜、京都市下京区の西本願寺聞法会館で行われた。緩和ケア内科の吉岡亮(あきら)部長(47)が「僧侶は医療者と補い合いながら、チーム医療の一員として活躍できる」と語った。 三菱京都病院は188床の総合病院。終末期のがん患者を支える緩和ケアにも取り組んでおり、昨年12月には緩和ケア病棟を開設した。一方で昨年2月から週1回、僧侶の山本成樹(なるき)さん(49)に患者や家族の話を聞く「傾聴」に当たってもらっている。 吉岡部長は、病院に死を連想させる僧侶の存在はふさわしくないとのイメージを否定し、「チーム医療には僧侶の仕事がある」と説明。一例として、患者から葬式やお墓に関する質問に加え、人生の意味や死後の世界についても尋ねられる点を挙げた。 その上で、「僧侶にだからこそ語られる話を通じ、患者の謎が解け
はじめに 国の隔離政策の根拠となった、「らい予防法」の廃止から今年で20年になります。 今回は、ハンセン病差別について、また、現状の課題や仏教者が加担してきた過ちなどについて改めて考えたいと思います。 ハンセン病とは ハンセン病は、「らい菌」という細菌によって起こる慢性感染症の一つです。1873年に「らい菌」を発見したアルマウェル・ハンセン博士の名前をとって、現在ではハンセン病といいますが、かつては「らい(癩)病」または「らい」と呼ばれていました。らい菌は純粋培養ができない微弱な菌であり、例え感染しても、発病するのはごく稀です。事実、現在日本においてハンセン病を発病する人はほとんどいません。たとえ新患と診断された場合でも、早期に発見し適切に治療すれば、後遺症もなく治る病気です。 ですから、これまで療養所で働いてきた職員が感染したことはありません。感染し発病する要因としては、よほど身体の抵抗
ハンセン病の患者・元患者への差別解消に向けた国際シンポジウム(法王庁保健従事者評議会、日本財団主催)が9日、バチカン(ローマ法王庁)で始まった。仏教やイスラム教など各宗教の指導者や元患者ら約250人が2日間にわたり議論し、世界への提言をまとめる。 バチカンでハンセン病に特化したシンポジウムが開催されるのは初めて。キリスト教の聖書にはハンセン病に類似した皮膚の病気の記述があり、恐ろしい病気として中世から強制隔離などの差別や偏見の対象となった。世界保健機関(WHO)のハンセン病制圧特別大使を務める笹川陽平・日本財団会長は「ハンセン病は神からの罰だとの誤解がまだある」と指摘。ハンセン病に対する正しい理解の促進を呼びかけた。 フランシスコ法王は2013年の就任後、「出世主義はハンセン病」などと述べたことがある。笹川氏はこの比喩に抗議。8日にバチカンで開かれた行事で法王に「ハンセン病を悪い例えに使わ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く