サッカー・ワールドカップ(W杯)が開かれているロシアでは、性的マイノリティー(LGBTなど)への差別が、社会問題の一つとされてきた。世界が注目する舞台を、問題解決の糸口にしたい――。そんな思いで大会を過ごしてきた人たちの姿を追った。 6月14日の開幕戦。約8万人が詰めかけたモスクワ・ルジニキ競技場のスタンドに、虹色の旗がはためいた。虹色は性的少数者のシンボルカラー。プーチン大統領の目の前で振られるその旗は、欧米メディアでも取り上げられ、話題を呼んだ。 「世界が注目する舞台で、あの旗を振ることに大きな意味があったんです」。旗を振ったアレクサンダー・アガポフさん(35)は言う。「ロシアであの行為が許されるか、一つのチャレンジでした。だからこそ、それを多くの人に証明できた事実が大きかった」 それほど、ロシアでは性的少…