国内外を問わず、児童虐待事件が後を絶たない。今年3月、両親の虐待により死亡した船戸結愛ちゃん(5歳)の事件の悲しみはインターネット上で広がり続け、6月には、著名人数人が「#こどものいのちはこどものもの」というハッシュタグをツイッター上で拡散。虐待防止キャンペーンを展開し始めた。 同ハッシュタグがついたツイート上では、救いを求める自らの子を衰弱死させた両親への批判コメントが並ぶ。一方で、社会的連帯のもと虐待を根絶しようという意見や、親たちが抱いたことがある子供への苛立ちや直情、言い換えれば「いつか自分が加害者になってしまうかもしれない」という子育てへの不安が綴られている。 核家族化した現代社会、また格差や離婚率が上昇している社会状況においては、子供を抱える親の金銭的、時間的、肉体的、精神的ストレスは比例して大きくなるしかない。もちろん、子供を虐待する親は許されるべきではないが、構造的に虐待が
愛知県立刈谷工業高校2年の山田恭平さん(当時16)が2011年に自殺した問題で、愛知県弁護士会が、山田さんが所属していた野球部の副部長だった教諭に対し、「人権侵害にあたる」として、警告書を出していたことがわかった。警告書は5月23日付。遺族が県弁護士会に、人権救済を申し立てていた。 警告書では、副部長が、11年の試験期間中、禁止されたトランプで遊んでいた複数の部員を平手打ちしたり、足を蹴ったりしたのは体罰で、暴行罪に該当する犯罪行為、人権侵害だとした。また、山田さんら体罰を見せられた部員に対しても、体罰を受けた部員と同様、心身に深刻な影響を与えるため、人権侵害と認定。「二度とこのような人権侵害行為を行わないよう」にと警告した。 さらに、同日付で刈谷工高に要望書も出した。「不適切な指導を未然に防ぐ」「自殺行為が発生した場合は原因を迅速に調査し、結果を親、教員、教育委員会などと共有する」ことな
今年3月、全国の警察が児童相談所に虐待の疑いがあると通告した子どもの数は04年以来13年連続で増加していると警察庁が発表した。保護者と子どもに一体何が起きているのか。長年、虐待をはじめ、家族や子育てをテーマに取材を続け、『児童虐待から考える』(朝日新書)を上梓したルポライターの杉山春氏に「虐待をしてしまう親の特徴」「虐待を減らすためには」「虐待が社会に訴えるもの」などについて話を聞いた。 ――今回の本に限らず、これまでにも『家族幻想:「ひきこもり」から問う』(ちくま新書)など家族や子育てをテーマにした取材をされています。その理由や、その中での本書の位置づけを教えてください。 杉山:バブルが崩壊した1990年以降、それまで育児誌などのメディアであまり目にしなかった「子どもを叩いてしまう」といった読者投稿や、うまくいかない子育てをテーマにした漫画などが度々掲載され、子育ての大変さが注目されるよ
小中学生向けのファッション誌『ニコラ』(新潮社)5月号の読者投稿コーナー「JCライフ」に、母親から暴力を振るわれているという相談が寄せられた。投稿した中学2年生の女の子は、母親が「いつもは優しいのですが、怒るとかなり怖い」そうで、 「叩くことは日常茶飯事ですし(怒っているときだけです、もちろん)、この間は朝8時くらいまでゆっくりしてたら、けられてしばらく歩けなかったり…」 と告白。母親に暴力の理由を聞くと「しつけしてるつもり」という答えが返ってきたが、 「でも、それは本当にしつけなんでしょうか?」 と疑問に思っているという。 児童相談所の担当者「叩いたり、蹴ったりするのは身体的虐待」 ニコラ5月号 蹴られて歩けなくなるというのは虐待の可能性が高い。しかし相談に答えた「ニコラにーさん」という編集者の男性は、次のように答えている。 「ちょっとさ『朝8時くらいまでゆっくり』を変えて、『朝8時には
ドメスティックバイオレンス(DV)がある家庭で育つ子どもは、性的虐待を受ける割合が高い。子どもの性暴力被害は闇の中に埋もれ、救われない子どもは多い。 ●DV家庭で多発 東京都内に住む40代の公務員、鈴木みきさん(仮名)は3歳の頃から父と近所の「お兄さん」から被害に遭った。風呂で父は「女の性器は汚いから男が洗うんだ」と股を広げ、指で性器をいじり観察した。「汚れていたらどうしよう」「また殴られるかも……」。みきさんにとって風呂は恐怖の時間だった。 家族ぐるみの付き合いがあった「お兄さん」には時々遊びに連れ出され、わいせつな行為をされた。「お兄さん」の性暴力は小学校低学年まで、父の性的虐待は中学まで続いた。「あってはならないこと」が起きていたみきさんは長年、記憶にふたをすることでなんとか生きてきた。連れ込まれた公衆トイレの臭い、恐怖、下半身の痛み……。「お兄さん」の記憶は10代半ばによみがえった
子どもへの体罰を大人の6割近くが容認していることが、子どもを支援する公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の調査でわかった。子育て中の親の約7割は実際に体罰の経験があり、調査担当者は「軽い体罰から問題が深刻化する事例もある。体罰をなくすことが虐待予防にも重要だ」と指摘する。 調査は昨年7月、全国の20歳以上の男女で子どもがいる1万人、子どものいない1万人の計2万人にインターネットで実施した。 「しつけのために、子どもに体罰をすることに対してどのように考えますか」との問いに「積極的にすべきだ」の回答が1・2%、「必要に応じてすべきだ」が16・3%、「他に手段がないと思った時のみすべきだ」が39・3%で、計56・7%が体罰を容認した。 容認する具体的な体罰は「お尻をたたく」が69・3%で最多だった。「手の甲をたたく」の65・5%、「ほおを平手でたたく」の30・7%が続いた。「ものを使
ー「パパ、パパ」。か細い声で呼びかける息子を置き去りにして、父親は家を出たー 「残酷な父親」によるネグレクトとして、大きく報じられた事件がある。 神奈川県厚木市で2014年5月、アパートの一室で白骨遺体が見つかった。ゴミに埋もれた布団の上にうずくまっていたのは、生きていれば中学1年生だったはずの男の子。男の子が5歳のとき、父親はこの部屋を出て行った。 東京高裁は2016年11月、父親を殺人罪で懲役19年とした一審の横浜地裁判決を破棄。「死亡する可能性が高いと認識していたとは言えない」として、保護責任者遺棄致死の罪で懲役12年を言い渡し、確定した。 児童虐待の取材を続けているルポライターの杉山春さんは、この父親と拘置所で面会し、手紙を交わし、裁判を傍聴した。取材を通して見えてきたのは、この父親の「残酷さ」ではなく「育てる力の乏しさ」だったという。 なぜ父親は、息子を置き去りにしたのか。なぜ息
不登校から発達障害や家庭の問題まで、幅広い相談に対応しているスクールカウンセラー。文部科学省の調査によると、公立小中高校などで平成27年度に相談した児童生徒や保護者、教職員の人数は延べ約300万人に上り、うち8割超を国が全校配置を進める小中学校で占め、さまざまなニーズに対応している。 相談内容は小中学校とも、発達障害(疑いや類似を含む)▽不登校への対応▽友人関係への対応▽家庭の問題▽学業・進路-が多い。ただ、小学校では教職員との関係やいじめも含めて内容が分散しているのに対し、中学では不登校が3分の1を占めた。 発達障害や児童虐待への対応では、児童生徒や保護者より、教職員からの相談を受けて助言するケースの方が多いことも調査で分かった。 文科省によると、政府の犯罪被害者対策や児童ポルノへの出演強要など多様な現場からも配置増強を求める声があるが、週1日4時間だと面談の事前予約で埋まってしまうとい
陶芸教室にあった少年の作品には「愛」と「希望」の文字が刻まれていた=東京都府中市の関東医療少年院で2017年5月10日、佐々木順一撮影 神戸市須磨区で1997年に起きた小学生連続殺傷事件から20年がたった。14歳で逮捕された加害男性(35)は、6年5カ月を少年院で過ごし、精神医療と更生教育の両面から特別なケアを受けた。男性が実際に収容されていた関東医療少年院(東京都府中市)を記者が訪ね、更生の現場を取材した。【茶谷亮】 郊外の閑静な住宅街に、ひっそりと建つ関東医療少年院。緑に囲まれた事務棟や正門は学校のようだが、少年たちが過ごす建物は高い塀に囲まれている。 法律上の病院にあたり、心身に深刻な疾患や障害を持つ少年を収容する第3種(医療)少年院。京都医療少年院(京都府宇治市)と共に、全国に2カ所しかない。
小さないのち 大切な君 子どもたちが自ら命を絶つ悲劇が繰り返されている。日本全体の自殺者数は減っている中で、小中高校生では減っていない。子どもの自殺を防ぐために、社会や一人ひとりは何ができるのだろうか。 警察庁の統計によると、2016年、320人の小中高校生が自殺で亡くなった。小学生12人、中学生93人、高校生215人。3分の2は男子だった。 自殺者全体の数は、03年の3万4427人をピークに減少傾向で、16年は2万1897人。06年施行の自殺対策基本法に基づく、各自治体の相談窓口の整備などが背景にあるとされる。一方、小中高校生の自殺者はこの10年、年間300人前後で推移し、350人を超えた年もあった。厚生労働省によると15~19歳では自殺が死因の1位、10~14歳では2位だ。 16年の小中高生の自殺の原因(複数の場合あり)を警察庁の統計でみると、「学業不振」など学校問題が36・3%で最も
政府は18日の犯罪対策閣僚会議で、児童ポルノや児童買春など18歳未満の児童が受ける性的被害の対策基本計画を策定した。 基本計画は性的被害について、「インターネットを通じ、長期かつ継続的に児童を傷つけることも多い」と指摘。〈1〉ネット上の性的被害に対し各国政府や民間企業が連携する国際枠組みへの参加〈2〉多くの児童が初めてスマートフォンを手にする進学・進級の時期に重点を置いた啓発活動〈3〉女子高生に接客させるビジネスの実態調査〈4〉児童福祉施設や市町村などでの被害児童の相談体制の充実――など88項目の施策を盛り込んだ。首相は会議で「あらゆる対策に強力に取り組み、児童の安全確保に全力で取り組む」と語った。 児童の性的被害者の数は近年増加しており、児童ポルノは1313人、児童買春は577人(いずれも2016年)に上っている。
家庭での虐待や非行によって居場所を失った少女を保護する「子どもシェルター」がさいたま市内で2月に開設され、4日午後6時半から、さいたま市のさいたま共済会館で設立記念集会が開かれる。シェルターを運営するのは、埼玉弁護士会有志で立ち上げたNPO法人「子どもセンター・ピッピ」。名称はひな鳥の鳴き声から、新たな旅立ちをイメージしている。 同施設は家庭の悪環境や貧困などで安定した生活ができず、緊急に居場所を必要とする20歳未満の少女が対象で、2カ月をめどに保護する。衣食住を提供しながら携帯電話の使用制限、無断外泊の禁止を通じ、風俗店や援助交際などの危険から遠ざける。さらに自立援助ホームや職場の紹介を行い、自立を後押しする。 子供の避難先では児童相談所の一時保護所があるが、18〜19歳は児童福祉法の適用外で、18歳未満でも定員や集団になじめないなどの理由で利用できない場合がある。ピッピの理事長、大倉浩
発達障害、虐待などで感情や行動が不安定になり、情緒障害児短期治療施設(4月から児童心理治療施設)でのケアが必要とされた九州の121人(昨年3月末現在)のうち、13%が九州外を含む他県に入所していたことが、西日本新聞の取材で分かった。施設不足や、受けられるケアが限られることが主な理由。遠い距離を通って支える家族らの負担も重く、受け皿の充実が急がれる。 同施設は心理療法や生活指導を通じた社会復帰を目的とし、全国に45カ所ある(昨年末現在、全国情緒障害児短期治療施設協議会調べ)。国は都道府県、政令市、児童相談所のある中核市に設置を求めるが、九州は6カ所にとどまり、佐賀県と3政令市は未整備。 九州の各県や政令市によると、昨年3月末現在、県外の施設に入所する子どもは、福岡、佐賀、宮崎3県からが16人。受け入れ先は長崎、熊本、鹿児島各県などで、福岡市から岡山県の施設に入所した子もいる。 「県外の方が近
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く