都道府県が第7次医療計画や第5期障害福祉計画に「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を明記し、精神障害者の地域移行を本格化させている。地域移行の中心を担うのが、医療・保健・福祉関係者による「協議の場」だ。厚生労働省によると、21道県(1月1日時点)が設置した。ただ、設置の時期などを明確にしていない自治体もあり、連携体制の構築については地域間で格差が生じる恐れもある。【新井哉】 ■20年度末までに全圏域での設置が目標 2020年度末までに全ての圏域ごとに、精神障害者地域移行・地域定着推進協議会などの「協議の場」を設置する―。第5期障害福祉計画の基本指針には、こうした目標が定められている。これを受け、障害福祉計画や医療計画に「協議の場」を設置する方針を盛り込んだ都道府県が少なくない。 都道府県ごとの設置状況はどうなっているのか。厚労省によると、▽北海道▽岩手▽宮城▽秋田▽福島▽千
2020年度にグループホーム(GH)で暮らす障害者が障害者支援施設に入所する人の数を上回ることが6月27日、厚生労働省の集計で分かった。施設からGHなどへの地域移行を進め、入所者数を減らす政策により逆転する。一方、精神科病院の長期在院者数は、厚労省の掲げた目標ほどは減らないことが判明。厚労省は退院した精神障害者を応援する地域住民を増やす方法を模索し、退院が進む環境づくりを進める考えだ。 都道府県が策定した第5期障害福祉計画(18~20年度)の集計結果を、同日の社会保障審議会障害者部会(部会長=駒村康平・慶應義塾大教授)に報告した。計画には、厚労省が示した目標値を踏まえ、20年度までのサービス利用見込みが盛り込まれている。 それによると、施設入所者は18年度の13万583人が20年度は3%減の12万7399人になる。GHは18年度の入居者数12万2114人が、20年度は11%増の13万601
国土交通省「介護者なき後」調査の結果概要※脊髄損傷者の入居(所)実績は、調査途中で質問項目に追加されたため、回答数はグループホーム613、入所施設265 障害者が暮らす全国のグループホーム(GH)と入所施設を対象に、国土交通省が寝たきりで意思疎通も困難な最重度の「遷延(せんえん)性意識障害者」の入居(所)状況を調査したところ、回答したGHで約0.4%、入所施設で約23.3%しか受け入れ実績がなかった。交通事故では重い後遺症を負った子を親が介護するケースが多く、「親なき後」の介護のあり方が家族の間で喫緊の課題になっている。介護者のいない障害者の居場所として期待されるGHなどが受け皿となり得ていない実態が浮かんだ。【江刺正嘉】 調査では、たんの吸引など医療的ケアに対応できるGHなどが少ないことが重度後遺障害者の受け入れを阻んでいる状況も判明。そのため同省は今年度から、重い後遺症がある交通事故被
企業に義務付けられている障害者の雇用割合(法定雇用率)が4月から引き上げられる。新たに精神障害者の雇用分も入れて法定雇用率を算出するようになるからだ。身体障害者に比べて安定して働くことの難しい精神障害者。その働く場を広げる取り組みが進んでいる。【鈴木直、下桐実雅子】 病院、適職探し支援 東京都八王子市の堀川正志さん(62)は、うつ病を抱えながら都内の大手スーパーに勤める。担当は、前の仕事の経験を生かせるポップ(店内に掲示する販売促進文)づくりやブログの更新。働き始めて5年半がたち、今では趣味の写真の腕前を買われて地域の風景写真のギャラリーも任され、客から好評だ。 「できる仕事は何一つないと思っていた。病気が治ってから就労を考えていたら、いまだに仕事はしていなかっただろう」。堀川さんは笑顔で語る。
自身の活動内容などについて説明する津田祥子さん(右)=滋賀県栗東市の栗東文化芸術会館さきらで、衛藤達生撮影 重度精神障害者の地域での自立を支援する専門家組織「Q-ACT(キューアクト)」=福岡=の創設メンバーを招いた講演とシンポジウム「精神障害を持つ方の地域生活を支えるために~Q-ACTの軌跡と今後の展開~」(県精神障害者家族会連合会など主催)が11日、栗東市綣2の栗東芸術文化会館さきらであった。県内外の関係者ら約150人が参加。訪問看護の重要性などについて意見を交わした。 Q-ACTのACTは包括的地域生活支援を意味する英語の略称で、1960年代に米国で生まれた考え方。連絡を受けると、看護師など専門家が利用希望者を訪問して、多様な観点から障害者が望む「自立」へ向け取り組む。Q-ACTは福岡市などで2チームが24時間365日無休で活動をしている。
厚生労働省が策定した、医療機関に支払う診療報酬と、障害福祉サービスの提供に対し支給する報酬の改定案の全容が27日、分かった。診療報酬の改定案では、高齢化に伴い医療費が膨張していることを踏まえ、紹介状なしで大病院で初診を受ける際に患者が5千円以上、再診時は2500円以上の定額負担が必要な病院数を大幅に増やす。障害福祉サービスの改定案では、重度障害者や障害児への支援を充実させる。 平成30年度の報酬改定は、介護報酬のほか医療報酬、障害福祉サービス報酬改定と6年に1度の「トリプル改定」となっている。 このうち診療報酬については、紹介状なしで初診を受ける際に定額負担を支払う医療機関について、病床数の基準を現行の500床以上から400床以上に変更し、対象を262病院から410病院に拡大する。 病院の収入を増やすとともに、大病院と中小病院・診療所との機能分担を推進し、かかりつけ医の機能を強化するのが狙
【WOMEN】医療と福祉の架け橋に 神戸アイセンター・ビジョンパークの情報コンシェルジュ、別府あかねさん 目の病気の研究・治療から臨床応用、リハビリ・就労支援までをトータルサポートする全国初の眼科専門施設として昨年12月、神戸市中央区にオープンした「神戸アイセンター」。その玄関に設けられた「ビジョンパーク」で、家族と離れ、医療と福祉の懸け橋として奮闘する女性がいる。情報コンシェルジュ、別府(べふ)あかねさん(42)。専門知識と笑顔が最大の武器だ。 視覚障害サポート施設で奮闘 別府さんは高知市出身。一昨年は、視能訓練士の資格を取るために、大阪で1人住まいをし、昨年4月からは、ビジョンパークを運営する公益社団法人ネクストビジョン(神戸市中央区)のスタッフとして、小学2年生の娘と神戸で2人暮らしをしている。 「小学6年生の長男と夫は高知にいますが、昨年、夫が県内に転勤になり単身赴任。長男は高知市
人工呼吸器をつけた「医療的ケア児」が学校に通える機会を広げようと、厚生労働省研究班が東京、埼玉など4都県の特別支援学校などで支援を始める。保護者に代わって看護師がケアを担えるようにし、来年度にも制度化につなげたい考えだ。 おなかに穴を開けて胃に管で栄養を入れる「胃ろう」や人工呼吸器などが必要な医療的ケア児が、公的医療保険で訪問看護を受ける場所は自宅に限られる。学校などは対象外なため、親が学校に付き添って、たんの吸引など医療ケアを行っていることが多い。 文部科学省は2013年度から自治体が看護師を雇って特別支援学校に配置する費用を補助したり、12年度から教員が医療的ケアを行えるよう研修制度を導入したりしているが、人工呼吸器をつけた医療的ケア児の通学は広がっていない。 研究班は、人工呼吸器をつけた医療的ケア児が親の付き添いがなくても通学できるよう、①日ごろ自宅で看護をしている訪問看護師が学校に
医療的デバイスを付けて生きる障害児、医療的ケア児。 その医ケア児を育てている母親が、この度の内閣改造で史上初めて大臣となった。 野田聖子総務相である。 【マーくんママとの出会い】 野田聖子さんとは特別養子縁組支援の法制化で、2013年後半から何度かお会いしていた。ただ、ちゃんと話すようになったのは、彼女のお子さんが、僕たちフローレンスの運営する「障害児保育園ヘレン」に偶然にも入園してきた時からだった。 野田さんのお子さんのマーくんは、痰の吸引など医療的ケアが必要で、普通の保育園や幼稚園には行けなかった。保育園や幼稚園は看護師を置いていないところも多く、またたとえ置いていたとしても、ほとんどの園では医療的ケアを行わない。 仕方がないので彼女は月に数十万円もかけて看護師を雇って、働いている時にみていてもらっているようだった。障害児保育園ヘレンには保育士も看護師もいるが、国の補助も活用して月々数
重症心身障がい者である坂川亜由未さんと母・智恵さんが共同で運営する地域コミュニティースペース「あゆちゃんち」(板橋区徳丸1)が4度目の夏を迎えた。 赤ちゃんも、お年寄りも、障がい児者も一緒に参加できる居場所づくりを目指している 亜由未さんは先天性の心臓病で生後4日目に手術を受け、その後に脳の血管が破れたことから脳性まひによって重度の障がいが残った。肢体不自由で首と右手以外はほとんど独力で動かすことができず、知的障がいも抱え、医療による支援を必要とする重症心身障がい者(=医ケア重心)の認定を受けている。 智恵さんによれば、生活介護のデイケア施設は、医ケアを必要としない重症心身障がい者(重心)は、例えば平日5日通うことができて定員数も多い一方、医療設備や専門の介助要員が必要となる医ケア重心は受け入れ可能な施設が少ない上、通える日数も週3~4日で定員数も極端に少ないという。「人目を避けて自宅や施
発達障害とは何か? 発達障害は今や医学だけではなく教育や福祉も含めていわば社会の抱える大きな問題となっている。 しかし発達障害が何を意味するかについてはわが国と米国でも異なるし、発達障害者支援法における定義(第2条:自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの)が質的な定義ではなく疾患定義であることもあって、実際には人によって独自に解釈している場合もある。 筆者は発達障害とは「発達の過程で明らかになるコミュニケーションや行動の問題によって社会生活に困難を生じてくるが、適切な対応によって困難は軽減されうる」障害であると定義している。 こだわりや過敏性、過活動性や見落とし、衝動的に行動したくなることがあるなどの発達障害の「欠片(かけら)」はいわばそれが大きいか小
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