今年3月、全国の警察が児童相談所に虐待の疑いがあると通告した子どもの数は04年以来13年連続で増加していると警察庁が発表した。保護者と子どもに一体何が起きているのか。長年、虐待をはじめ、家族や子育てをテーマに取材を続け、『児童虐待から考える』(朝日新書)を上梓したルポライターの杉山春氏に「虐待をしてしまう親の特徴」「虐待を減らすためには」「虐待が社会に訴えるもの」などについて話を聞いた。 ――今回の本に限らず、これまでにも『家族幻想:「ひきこもり」から問う』(ちくま新書)など家族や子育てをテーマにした取材をされています。その理由や、その中での本書の位置づけを教えてください。 杉山:バブルが崩壊した1990年以降、それまで育児誌などのメディアであまり目にしなかった「子どもを叩いてしまう」といった読者投稿や、うまくいかない子育てをテーマにした漫画などが度々掲載され、子育ての大変さが注目されるよ
子どもへの体罰を大人の6割近くが容認していることが、子どもを支援する公益社団法人「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の調査でわかった。子育て中の親の約7割は実際に体罰の経験があり、調査担当者は「軽い体罰から問題が深刻化する事例もある。体罰をなくすことが虐待予防にも重要だ」と指摘する。 調査は昨年7月、全国の20歳以上の男女で子どもがいる1万人、子どものいない1万人の計2万人にインターネットで実施した。 「しつけのために、子どもに体罰をすることに対してどのように考えますか」との問いに「積極的にすべきだ」の回答が1・2%、「必要に応じてすべきだ」が16・3%、「他に手段がないと思った時のみすべきだ」が39・3%で、計56・7%が体罰を容認した。 容認する具体的な体罰は「お尻をたたく」が69・3%で最多だった。「手の甲をたたく」の65・5%、「ほおを平手でたたく」の30・7%が続いた。「ものを使
ー「パパ、パパ」。か細い声で呼びかける息子を置き去りにして、父親は家を出たー 「残酷な父親」によるネグレクトとして、大きく報じられた事件がある。 神奈川県厚木市で2014年5月、アパートの一室で白骨遺体が見つかった。ゴミに埋もれた布団の上にうずくまっていたのは、生きていれば中学1年生だったはずの男の子。男の子が5歳のとき、父親はこの部屋を出て行った。 東京高裁は2016年11月、父親を殺人罪で懲役19年とした一審の横浜地裁判決を破棄。「死亡する可能性が高いと認識していたとは言えない」として、保護責任者遺棄致死の罪で懲役12年を言い渡し、確定した。 児童虐待の取材を続けているルポライターの杉山春さんは、この父親と拘置所で面会し、手紙を交わし、裁判を傍聴した。取材を通して見えてきたのは、この父親の「残酷さ」ではなく「育てる力の乏しさ」だったという。 なぜ父親は、息子を置き去りにしたのか。なぜ息
不登校から発達障害や家庭の問題まで、幅広い相談に対応しているスクールカウンセラー。文部科学省の調査によると、公立小中高校などで平成27年度に相談した児童生徒や保護者、教職員の人数は延べ約300万人に上り、うち8割超を国が全校配置を進める小中学校で占め、さまざまなニーズに対応している。 相談内容は小中学校とも、発達障害(疑いや類似を含む)▽不登校への対応▽友人関係への対応▽家庭の問題▽学業・進路-が多い。ただ、小学校では教職員との関係やいじめも含めて内容が分散しているのに対し、中学では不登校が3分の1を占めた。 発達障害や児童虐待への対応では、児童生徒や保護者より、教職員からの相談を受けて助言するケースの方が多いことも調査で分かった。 文科省によると、政府の犯罪被害者対策や児童ポルノへの出演強要など多様な現場からも配置増強を求める声があるが、週1日4時間だと面談の事前予約で埋まってしまうとい
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