2月29日。朝、東京から新幹線に乗り、名古屋で在来線に乗り換えて、松阪駅に着いた。 大学3年生のとき、民俗学研究会の調査で三重県と和歌山県の県境にある集落に何度か滞在した。その際、名松線の乗り換えで松阪は通っているが、町なかを歩いた記憶はあまりない。一度だけ、ひとりで松阪の商人宿みたいなところに泊まったことがあるが、10時過ぎると玄関を閉められて外に出ることはできなかった。それから、もう35年が経つ。 松阪駅では山﨑範子さんが出迎えてくれる。『地域雑誌 谷中・根津・千駄木』を発行した谷根千工房のメンバーだが、昨年この地に移住した。いまは松坂城の近くに並ぶ〈御城番屋敷〉という重要文化財の武家屋敷の一区画にお住まいで、私も泊めてもらう。ここを拠点に、松阪の3つの資料館の書庫を取材するのだ。 荷物を置かせてもらって、松阪駅から近鉄で伊勢中川駅へ。ロータリーで待っていると、 車が迎えに来てくれる。