四季のある日本では古来、文学作品に季節の話を織り込むことがしばしば行われてきました。『枕草子』は平安時代中期の女性で歌人の清少納言が綴った随筆です。その『枕草子』は季節に関する話から始まります。 清少納言は四季、とりわけ春をどう捉えていたのでしょうか。 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。 これが『枕草子』の書き出しです。 「あけぼの」は「夜がほのぼのと明け始めるころ」で「太陽が昇る直前のころ」のことです。「やうやう(ようよう)」は「だんだん」「しだいに」の意で、「山ぎは(山ぎわ/山際)」は「山の稜線と接するあたりの空」のことです。そして「紫だちたる」は「紫がかっている」の意です。 ですから、現代語では次のような意味です。少しポップに訳してみます。 春は明け方がいいわね。だんだんと白んでいく山際の空が少し明るくなって、紫がかっている雲が細