昨年の夏から秋にかけて、ハリウッドは、過去にない状況に直面していた。 オスカー狙い作品の、監督、脚本兼主演俳優に、昔のレイプ疑惑が浮上したのだ。 問題の映画は、ネイト・パーカーの「The Birth of a Nation」。19世紀のアメリカ南部で奴隷の暴動を率いたナット・ターナーの伝記物で、同年1月のサンダンス映画祭で審査員賞と観客賞の両方を受賞した話題作だ。映画祭中の激しい競売の結果、フォックス・サーチライトが、サンダンス史上最高額の1,750万ドルで配給権を獲得した。同じ頃、オスカーノミネーションが発表され、演技部門の候補20人全員が白人だったことから「白すぎるオスカー」バッシングが起きていただけに、業界は「来年は少なくともこの映画があるから大丈夫」と、多少の安堵を感じていたものだ。春にはパーカーが、興行主のコンベンション、シネマコンで、“ブレイクスルー・ディレクター・オブ・イヤー