ロシア国立ボリショイ劇場のウラジーミル・ウーリン総裁=ボリショイ劇場で2023年4月19日、大前仁撮影 ロシアがウクライナで続ける「特別軍事作戦」は、自国の芸術界にも暗い影を落とす。当局から好ましくないと見なされて上演されなくなった演目や、軍事作戦に異を唱えて職を離れた舞台芸術家も散見される。世界最高峰の一つといわれるロシア国立ボリショイ劇場の状況を通じ、政治に左右されている舞台芸術の現状を追った。 ロシア軍が2022年2月にウクライナに攻め込むと、欧米を中心とした世界の舞台芸術界は、ロシアを締め出す方針を打ち出した。ボリショイ劇場でも、外国人ダンサーが相次いで退団するなど混乱が広がった。それでも軍事作戦が2年目に入った今、ボリショイでは日常の光景が戻ってきている。 「国際的に有名な劇場なので立ってみたかった」。こう話すのはイタリアのテノール歌手、アントニオ・ポーリさん。ボリショイ劇場で5