この季節、クチナシの木についている、小さなラグビーボール型の鮮やかなオレンジ色の実が目を引きます。クチナシの実は、古くから食品に色を付ける天然色素として使用されていて、日本人にはとても身近な存在です。詳しい話を管理栄養士の柴田聡美さんに伺いました。 「クチナシの実は果肉を水に溶かすと、鮮やかな黄色に染まります。この黄色は古くから、たくあんや栗の甘露煮の黄色を出したり、繊維を染める染料としても使われてきました。日本では飛鳥時代から用いられていたといいます。平安時代にはクチナシで染めた布は梔子(しし)色と呼ばれ、十二単(じゅうにひとえ)にも使われていたそうです。 現在でも食品を染める天然色素として広く使われていて、たくあん漬けなどの食品ラベルには『クチナシ色素』という表示が見られますが、その歴史はかなり古いものなのです。 「世界最古の薬学書『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』にも載っていて