トントン、トントン…。小さな手が、トンカチで板にくぎを打つ音が聞こえてきた。東京都杉並区の認可保育所「Picoナーサリ和田堀公園」。5歳児の保育室では昨年12月、園児11人と保育士3人がクリスマスの飾り作りをしていた。 「みて、みて。できた!」。初めてくぎを打った子が声を上げ、そばの保育士が笑顔で応える。「保育士が多く、くぎを使うような活動もできるんです」と、運営する社会福祉法人「風の森」統括の野上美希さん(46)はそう話す。
先日、ばあちゃんが死んだ。両親の離婚後、7歳・5歳・3歳だった私たち姉妹をずっと育ててくれた。専業主婦だった母は苦労して職を探し、仕事を転々としていた。「あそこは母子家庭だから」と陰口を言われる時代だった。 いつもあたためてもらっていた気がする。同じ布団で寝ると、太ももに私の冷たいつま先をはさんだ。母とケンカした後、一緒に風呂に入ると「お母さんも大変なんだから、分かってやれ」と、何度も手でお湯をすくって肩にかけてくれた。涙とお湯が混じった。大人になっても、寒い夜は必ず湯たんぽを手渡された。 病院から自宅に戻って9日目、ばあちゃんは息を引き取った。ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパーの方々がいなかったら、家でのみとりは不可能だった。それなのに、介護をはじめとするケア労働の報酬や条件は、専門性や重要性に見合っていない。幼い者を育み、最期の尊厳を守る。人生の初めと終わりを支える「ケア」の重みを痛
Published 2022/01/23 21:01 (JST) Updated 2022/01/23 21:17 (JST) 政府は、社会福祉法人やNPO法人などに業務委託し、子育て家庭を訪れて料理や掃除といった家事を支援する制度を新設する方針を固めた。子どもの親が自身の親の助けを得られないなど育児負担が重い場合、手を差し伸べたり孤立化を防いだりするのが狙い。今国会に提出予定の児童福祉法改正案に明記する方向だ。2024年度からの実施を目指す。関係者が23日、明らかにした。 近所に頼れる人がいないケースを含めて親の育児負担増が懸念され、ストレスは虐待を招く恐れがある。新たな支援案は、市区町村が実施主体となり、NPO法人や社会福祉法人、企業などに業務委託。スタッフが家庭を訪問する。
出荷を待つコロナ製のエアコン=新潟県三条市東新保の同社で2020年7月8日午後1時50分、露木陽介撮影 新潟県三条市の市民団体が、新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮している県内の一人親家庭を対象に、家庭用エアコンを無償で設置するプロジェクトを始めた。同市に本社を置く暖房・空調機器メーカーのコロナが、無償で新品のエアコンを提供する。【露木陽介】 プロジェクトを実施するのは、コロナ禍を受け、県内でフードバンク事業に取り組む11団体が連携して4月に発足した新潟県フードバンク連絡協議会(事務局・三条市)。新型コロナの影響で生活に困窮する家庭向けに、食料を無償提供する緊急支援を5月に始めた。家庭や店舗などから不要になった食料を集め、これまで延べ約2000世帯の一人親家庭に届けてきた。 その中で、家庭からは「お金がかかる外出を控えていることで、子どもがずっと家にいなければならず、ストレスを抱えてい
2019.05.05 18:05 「子ども食堂」ムーブメントの隠された“シナリオ” 政府は7年前から社会保障の国家責任を放棄してきた 「ファミマこども食堂」は、「子ども食堂」への冒涜か? 2019年2月、全国でコンビニチェーンを経営するファミリーマートが、「ファミマこども食堂」を全国展開する計画を公表した。プレスリリースによれば、「ファミマこども食堂」とは、店舗スペースで開催されるイベントで、1回あたりの開催時間は40分間の食事と20分間の体験イベントを組み合わせて1時間であるという。体験イベントの例としては、コンビニのバックヤード探検やレジ打ち体験が示されている。 「ファミマこども食堂」の計画が公表されると、直後から、「企業の社会的貢献という名の広報イベントではないのか」という大きな批判と、批判者への批判や称賛が湧き上がった。 フリーライターの赤木智弘や社会運動家の藤田孝典は、「ファミマ
幼い命が奪われるなど深刻さを増す児童虐待問題を巡り、首都圏1都3県の知事と政令市長でつくる9都県市首脳会議は24日、東京都内で開いた会合で、一丸となって根絶を目指す方向で一致した。「子どもたちが笑顔で安心して暮らせる社会の実現に向け、児童相談所と警察、学校、地域との連携強化を図る」とする共同宣言を発表。虐待対応に当たる人材確保を国に要請する方針も確認した。 千葉県野田市の小4女児死亡事件では、児相が県警への通報を怠るなど行政の相次ぐ不手際が発覚。政府による改正児童虐待防止法成立に向けた動きもある中、「首都圏共通の課題」(小池百合子都知事)として対応を急ぐ考えで合意した。 連携強化の具体策として、児相と警察との情報共有にも言及。黒岩祐治知事が神奈川での導入例を報告すると、「学校との連携強化も進めていかなければならない」(相模原市)、「首都圏で同じ仕組みができることが大切だ」(川崎市)などと必
少子化対策に取り組む国は、子育てしやすい環境をつくろうと、職場に子どもを帯同する「子連れ出勤」を後押しする。県や笠間市も推進へ動きだした。関係者は「働き方の選択肢を増やせる」と説明するが、子連れ出勤は女性に偏りがちで「母親の負担が増すだけ」との批判もある。こうした声の裏側には、父親の子育てや保育所整備の不十分さがある。 (越田普之)
2018.12.08 00:05 児童虐待加害者の6割超は実母、では「虐待の連鎖」は本当なのか? その医学的根拠に迫る ――現在の精神医療は、どのような変遷を経て今に至っているのか? 今では否定されている治療法が、当時行われていたのはなぜなのか? 現役の精神科医が解説する、精神医学の“歴史考証”! 第2回 児童虐待加害者の6割超は実母、では「虐待の連鎖」は本当なのか? その医学的根拠に迫る 子どもに対する虐待は、有史以前から存在しています。かつては、虐待が社会的に一定程度容認されていた面もありますから。太古からの嬰児殺や遺棄、強制労働などは、現代の感覚でいえば、すべて虐待に含められるでしょう。 歴史的に子どもに対する虐待が社会的に注目される問題となったのは、1874年にニューヨークで起きた「メアリ・エレン・ウィルソン事件」がきっかけです。この事件の主人公である8歳の女児は、約6年にわたり養
「亡くなってから大人にいろんなことを教えてくれるんです」。以前、虐待死した子らのケースを学ぶ研修会を取材した際の医師の言葉が忘れられない。遺体に残る傷跡が暴行を物語る。耳をふさぎたくなる話だったが、虐待の実態を直視する機会にもなった ▼ただ、残念ながら虐待死は後を絶たない。千葉県の小学4年生栗原心愛(みあ)さん(10)が父親から冷水をかけられるなどして自宅浴室で死亡した事件。悲惨な事件に胸が痛む。なぜ救えなかったのか ▼心愛さんが学校のアンケートで「父親からいじめを受けた」と訴えたことをきっかけに、児童相談所が一時保護した。だが、保護の解除後は、児相や学校側は自宅を訪問しておらず、虐待リスクへの対応は継続されていなかった ▼児相は対応の不足を認めているが、あまりにも無責任すぎないか。学校側も長期欠席について、家庭訪問で確認することはなく、結果的にリスクは見過ごされてしまった ▼自宅近くでは
企業から集める拠出金で運営費が賄われる新たなタイプの「企業主導型保育所」が待機児童対策の目玉となっている。 スタートから3年目、運営する事業者にとっても、利用する親子にとっても、大混乱した状態となっている。 企業主導型保育所の理想と現実 「いったい、なぜ不採択になったか分からない」と、都内のある事業者は嘆く。待機児童が多い地域で4つの「企業主導型保育所」を新規開設しようとしたが、ふたを開けたら1施設しか認められなかった。 企業主導型を設置するに当たり、自治体の保育課にも細かく相談したうえで、自治体からも「ここに企業主導型保育所を作ってもらえるとありがたい」と言われながらも叶わない、という矛盾が生じている。 2016年度から始まった企業主導型保育は、企業から拠出される「事業主拠出金」で運営費が賄われている。 内閣府が管轄となる政府肝いりの待機児童対策に位置付けられ、企業が従業員に向けて作る福
東京・港区が南青山の一等地に建設予定の児童相談所(児相)を含む複合児童施設を巡って、「青山のブランドイメージが落ちる」などと反対する一部近隣住民と区との溝が深まっている。 10月の説明会の混乱の様子はネットで拡散され、今月14、15日の説明会も大荒れとなった。児童相談所は高級住宅地に、なじまないのか。都が管轄する東京都世田谷児童相談所の周辺の住民の声を聞いた。 小田急線・千歳船橋駅から徒歩10分。一戸建てが立ち並ぶ閑静な住宅地に、世田谷児相はある。近くに約50年住む女性住民によると、もともと同地には赤十字社が運営する児童施設があり、一度更地になった後、10数年前に現在の児相が建設されたという。女性住民は「この近所は地主が多い。おおらかな人ばかりで『地域のためになるなら』と、反対運動は全く起きなかった」と話す。 南青山では治安、地価下落に対する不安の声もあったが、女性住民は「世田谷は、都の職
働く母親の割合が初めて7割を超えたことが、厚生労働省が20日に公表した2017年の国民生活基礎調査で分かった。 調査は昨年6~7月に実施。約6万1千世帯に世帯や就業状況を、うち約9千世帯には16年の所得状況も尋ねた。18歳未満の子がいる世帯の母親は「仕事あり」が70・8%(前年比3・6ポイント増)で、「正規」24・7%、「非正規」37・0%、「その他」(自営業など)9・1%だった。統計がある04年以来初めて7割を超えた。 一番下の子の年齢別にみると、正規で働く母親は子の年齢にかかわらず20%台。一方、非正規は0歳児の母親が10%、1、2歳では20%台前半だが、12~14歳では47%まで上がるなど子の年齢が上がるにつれ上昇する傾向がみられた。 16年の世帯あたりの平均所得は前年比2・7%増の560万2千円。子育て世帯では4・6%増の739万8千円、65歳以上の高齢者世帯では3・4%増の318
インド・ムンバイで、レイプ事件に抗議する活動から(2018年4月13日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / PUNIT PARANJPE 【7月24日 AFP】インド東部の児童養護施設で少女40人以上が性的虐待を受け、1人が殺害されたとの疑惑が浮上し、警察が23日、この施設の敷地で掘り起こし作業に着手した。 この施設はインド東部ビハール(Bihar)州ムザファルプール(Muzaffarpur)にある貧困少女向けの州営児童養護施設。施設で暮らす少女が職員に殴られ死亡したのを目撃したと被害少女の1人が話したことから、警察が裁判所から敷地を掘り起こす許可を得た。 地元警察がAFPに語ったところによると、検死官と警察が立ち合いの下、被害少女が指摘した場所で掘削機による掘り起こし作業が行われている。 この施設をめぐってはムンバイ(Mumbai)を拠点とする機関が5月に報告書を発表し、施設内
18歳未満の子どもたちが寮生活をしている県立明石学園=明石市魚住町清水で2018年6月15日、浜本年弘撮影 児童自立支援施設・兵庫県立明石学園(同県明石市魚住町清水)で今月1日、50代の男性寮長が10代の男子寮生に対し、馬乗りになるなどの行為をしていたことが15日、学園や県への取材でわかった。学園は「虐待」と認め、県は「行き過ぎた指導」としている。学園は関係する保護者に謝罪し、事実関係をさらに調べている。 学園や県によると、寮長は1日午前2時ごろ、指導する目的で、寮内の居室にいた寮生の胸ぐらをつかんで寮のロビーへ連れて行った。そこで寝ていたもう1人の男子寮生に、1時間以上、馬乗りになり、居室から連れてきた寮生にも一時、馬乗りさせた。寮生2人は親しかったという。同日、寮生の訴えで発覚。寮長は「逃げないようにして説教をしていた。殴ったり蹴ったりはしていない」「指導のためきっちり話をしないといけ
後藤広史さん(日本大学准教授) 子どもの貧困に対する支援の手立ては、行政による生活保護のような金銭給付や個別の相談援助などに限られていました。 そこへ、子ども食堂という新しい民間の動きが出てきたことは、歓迎しています。地域の大人が子どもを見守り、子どもにとって親以外との関係を育む土壌が生まれるのなら、とてもいいことです。 生活に困窮する人たちは、地域とのつながりが途切れがちです。子ども食堂は、移動しなくても生きていけるだけのつながりをつくり出す可能性も秘めていると思います。 でも、この取り組みをめぐる社会の動きには、気がかりな点がいくつかあります。 まず、貧困問題が分断されて語られる点です。「子どもの貧困」「下流老人」などの言葉で、共感が集まりやすい特定の世代や人たちに焦点があたり、対策につながる。悪いことではありませんが、「大人の貧困」をみてきた立場としては、貧困の全体像をとらえようとい
自民党の萩生田光一幹事長代行は27日、宮崎市内で「0~3歳児の赤ちゃんに『パパとママ、どっちが好きか』と聞けば、どう考えたって『ママがいい』に決まっている。お母さんたちに負担がいくことを前提とした社会制度で底上げをしていかないと、『男女平等参画社会だ』『男も育児だ』とか言っても、子どもにとっては迷惑な話かもしれない」と語った。 党宮崎県連の会合で講演した。萩生田氏は「待機児童ゼロ」をめざす政府方針を紹介したうえで、0歳児保育をめぐり、「生後3~4カ月で、『赤の他人』様に預けられることが本当に幸せなのだろうか」と疑問を呈した。さらに「慌てずに0歳から保育園に行かなくても、1歳や2歳から保育園に入れるスキーム(枠組み)をつくっていくことが大事なのではないか」と訴えた。(小出大貴) 萩生田氏の発言要旨は次の通り。 ◇ 東京ではいま0歳の赤ちゃんの保育園が足りないことが問題になっていて、国では「待
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