映画監督・作家の森達也氏が3月19日、死刑判決直後の植松聖と面会した。2016年、入所中の知的障害者19人が殺害されたあの事件の深層とは何か。そして、元職員・植松聖とは何者なのか――。 第1回はこちら:相模原障害者殺傷事件とは何だったのか?「普通の人」植松聖との会話 植松聖の儀式 すべては一瞬だった。ふいに刑務官に右手を掴まれた植松聖は、抵抗するような素振りはまったく見せないまま、左手で外したばかりの包帯(のキャップ)を、右手の小指の欠損の上に素早く戻す。それを目視した刑務官は、無言のまま、掴んだ植松の右手を放して椅子に戻る。植松も一言もしゃべらない。透明なアクリル板越しにこの光景を眺めながら、まるで儀式のようだと思う。僕の隣に座る篠田博之(月刊「創」編集長)も、このときはずっと沈黙していた。 あとから篠田に聞いたが、面会中に植松が包帯を外して傷口を見せようとしたことは、これが初めてではな