統一ドイツの初代大統領となったリヒャルト・フォン・ワイツゼッカー氏が先月31日、死去した。本紙は翌1日付朝刊で、「荒れ野の40年」演説として知られる戦後40年を節目とする連邦議会での演説をはじめ、退任後もナチスの歴史を直視することで近隣諸国との和解を促してきたワイツゼッカー氏の歩みを紹介した。「演説の中身を詳しく知りたい」。多くの読者から強い関心が寄せられた。戦後70年を迎えた今、過去と真摯(しんし)に向き合い「ドイツの良心」ともいわれたワイツゼッカー氏の言葉をあらためてかみしめたい。 ワイツゼッカー氏が戦後四十年にあたる一九八五年五月八日、西ドイツ(当時)の首都ボンの連邦議会で行った演説の要旨は次の通り。 五月八日は記憶の日である。記憶とは、ある出来事を誠実かつ純粋に思い起こすことを意味する。 われわれは戦争と暴力の支配で亡くなったすべての人の悲しみを、とりわけ強制収容所で殺された六百万