1986年、英国の新聞サンデータイムズがのせた大スクープ記事。イスラエルが200あまりの核弾頭を保有し、米・ソ・中・英・仏の超大国に次ぐ、世界第6位の強大な核兵力を持つことが伝えられたのだ。当時イスラエルは、核兵器を持っているとも持っていないとも明らかにしない曖昧政策を取り続け、周辺のアラブ諸国を牽制していた。 情報をリークしたのはモルデハイ・バヌヌという男。1977 年から85年にかけて、イスラエルの砂漠の町ディモナにある地下の秘密核開発施設で技師として働いていた。自分の仕事が、中東や世界の平和を乱すという罪悪感に苛まれ、施設の各所に忍び込み、国家の最高機密である60枚の写真を盗み撮りして持ち出したのだった。 サンデータイムズ社が、バヌヌの情報の裏取り調査を慎重に行っている間、バヌヌはロンドンのホテルにかくまわれる。ある日、ニューススタンドで見かけたブロンドの美女が、やがて彼に接近し、ロ