■成熟期の「象徴」制を沈思黙考す 平成の世になってから、もう20年がたったのかと思う。それは私にとっては、東京生活から京都住まいに移ってからの期間にぴったり重なっている。つまりこの20年は、京都の地から東京の盛衰をうかがう偶然の機会だったことになるが、同時に千年の都という歴史の鏡を通して、日本の国を占う絶好の機会でもあった。 その鏡に映しだされたこの国の姿は、はたしてどのようなものだったのか。ここではさしあたり二つほど問題を提出して、天皇陛下のご在位20年目を偲(しの)ぶよすがとしたい。 一つ目は、この国における戦後民主主義と象徴天皇制の関係が、いったいどのように推移したのかということ、 二つ目が、皇室における象徴家族と近代家族という二重の性格が、今日どのような局面を迎えているかということ、以上の二つである。もちろんこの二つが「象徴」というキーワードを介して互いに関連していることはいうまで