「交渉は円満だ」と喜んでいたが… ――当時の日本軍の戦略眼のなさを痛感するのが、当時の山西省で独立勢力を築いていた軍閥・閻錫山えんしゃくざんを味方に引き入れようとする対伯工作です。詳しくは本書の第3章に譲りますが、日本軍側の記録では「閻錫山は友好的だ、交渉は円満だ」と大喜びしているのに、閻錫山側の記録はまったくそうではない。話は結局、最後まで平行線です。 円満じゃないですね(笑)。でも、閻錫山も閻錫山で、やっぱり勝ち馬に乗らないといけない。当時の彼は、山西省で何十年も君臨してきた一流の寝技師ですから。小手先で交渉に臨む日本はイチコロで騙されてしまう。しかも、最後にはいわゆる「蟻の兵隊」(*1)です。閻錫山は、日本軍の戦力まで寝技で自軍に組み込んでしまうほどしたたかだった。 (*1)「蟻の兵隊」……中国共産党と戦うために戦後も山西省に残された日本兵部隊。本人らも知らないうちに上官から現地除隊