終戦時の混乱で旧満州(現中国東北部)などに取り残され、日中国交回復後に永住帰国した残留孤児らを対象に、厚生労働省は昨年度から介護施設に出向いて中国語で話し相手になる「語りかけボランティア訪問」を始めた。残留孤児の平均年齢は76歳(2015年度)と高齢化が進んでおり、介護施設で言葉の壁や生活習慣の違いから孤立感を深める人も増えている。こうした人を訪問して不安や負担を軽減し、介護サービスを利用しやすくするのが狙いだ。 8月7日昼ごろ、福岡市博多区のデイサービス施設で、中葉(なかば)日出子さん(75)は語りかけボランティアの大石れい子さん(68)の訪問に笑顔を見せ、「身内のよう。うれしい」と中国語で出迎えた。
西日本豪雨で甚大な被害を受けた広島県で、聴覚障害者が同じ障害のある被災者を支援している。「広島県ろうあ連盟」が運営するボランティアセンターが参加者を募り、同県坂(さか)町(ちょう)などの被災地で活動を始めた。「私たちも復興の力になりたい」。参加者は被災者と手話でコミュニケーションをとりながら、片付けや土砂のかき出しを精力的に行っている。(桑波田仰太、入沢亮輔) 氾濫した土砂に多くの民家が巻き込まれた同町小屋浦地区。被害にあった同地区の大島孝博さん(46)宅に、スコップを持った聴覚障害者や手話通訳者ら10人が訪れた。 「この土砂はどこにかき出せばいいのか」「土(ど)嚢(のう)はどこに積み上げればいいか」。耳は聞こえないが手話通訳を通じ、大島さんの要望を理解して作業にあたる。10人がそれぞれスコップで土砂をかき出すなどし、あっという間に土嚢の堤防をつくっていた。 大島さんと同居する両親は聴覚障
国立大学は全盲や車いすの障害者に危険な場所が少なくない――。総務省近畿管区行政評価局が、障害者と一緒に近畿周辺の国立大7校を訪ねて調べたところ、そんな現状がわかり、同局は各校に改善を求めた。 日本学生支援機構の実態調査によると、障害のある学生が在籍する大学は2016年度、全体の86%に当たる667校。学生数は約2万5千人で、12年度より約1万4千人増えた。近畿行政評価局は障害者差別解消法の全面施行から1年がたった17年5~11月、全盲や車いす利用の障害者と福井、滋賀、京都、大阪、神戸、奈良女子、和歌山の7大学を訪ねた。 その結果、全盲の人は①多目的トイレの「便器洗浄」と「呼び出し」ボタンが区別できない②壁に設置されたモニターの角に頭をぶつける危険がある③階段の上に点字ブロックがなく転落の危険がある、といった点を指摘。さらに多目的トイレは広くて設備の位置を把握するのが難しく使いにくいが、点字
LGBT旅行者を取り込め!=東北6県でモデル事業-復興庁 2018年07月25日11時00分 復興庁は、東北6県に訪日外国人旅行者を誘致する一環で、性的少数者(LGBT)の取り込みに本腰を入れる。観光地としての評価が確立されれば、コミュニティー内で口コミで情報が広がりやすい点に着目した。宿泊事業者向けに受け入れ環境づくりに関するセミナーやモニターツアーなどを行う。 LGBT「生産性なし」=自民・杉田氏寄稿に批判噴出 昨年の全国の外国人宿泊者数(速報値)は7180万5000人泊で、東日本大震災前の2010年と比べると約3倍。一方、東北6県では約2倍にとどまる。復興庁は訪日客を増やすモデル事業を16年度から展開しており、18年度はテーマ別に10件を選定した。 同庁はこのうち1件をLGBT向けに設定。旅行先で気兼ねなく過ごせるよう「ネガティブに受け入れない」、他の旅行商品と異なる土地の魅力を提供
外国人にもわかりやすい「やさしい日本語」で、避難所での生活情報を伝えられるポスターがインターネットで公開されている。作成した弘前大学の佐藤和之教授(社会言語学)は「外国人だけでなく高齢者や子どもにも分かりやすい表現」と活用を呼びかけている。 「やさしい日本語」は阪神大震災をきっかけに、命を守るための言葉として佐藤教授らが作った。当時、災害情報から取り残された外国人が多く、死傷率が日本人より高かったという。 今回の豪雨災害で、インターネットサイトへのアクセス数は通常の2~3倍に。西日本からが目立っており、外国人向けの支援情報が求められているようだとしている。 ポスターは、避難場所や病院で使える「ライフライン」、「飲食物・日用品」、「病院・健康」、「衛生・避難所生活」について、豊富に言葉をそろえている。 「水(みず)を 無料(むりょう)で もらうことが できます お金(かね)は いりません」、
成田空港は2018年6月28日、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、日本の表玄関の役割とともに、将来を見据えた機能強化や利便性・快適性向上につなげる基本方針および具体的な取り組みを明らかにした。 成田空港は2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、保安検査体制の強化や臨時ターミナルの整備、ユニバーサルデザインの充実、おもてなしの空間演出などの各種施策を行う。 臨時ターミナル整備やユニバーサルデザインの拡充 保安検査体制では、爆発物の自動検知機能を有し、3D映像で全方向からモニター確認が可能なCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)型のX線検査装置を2019年度中に導入し、2019年9月末~2020年3月に順次運用を開始する。設置台数は、第1ターミナルの北ウイングに1台と南ウイングに2台。第2ターミナルには3台、第3ターミナルには1
焼津市で日本語が苦手な外国人の子どもたちの学習支援をしている市民団体「多文化共生を考える焼津市民の会・いちご」(谷沢勉代表)が、市内で暮らす外国人の子どもたちにアンケートを実施した。日本語の学習意欲を問う設問(複数の選択肢を回答可)では84・8%が「もっと日本語を学びたい」と回答した。【松岡大地】 一方で、「学校で嫌なことは?」(複数回答可)との質問には、65・2%が「勉強が難しい」とした。焼津市では水産加工工場などで働く外国人やその子どもが増えており、谷沢代表は「市全体で外国人の子どもの学習支援状況の調査につながってくれれば」としている。 アンケートは外国にルーツを持ち焼津市内で暮らす小中学生(6~15歳)を対象に5月7~28日に行い、49人から回答を得た。ルーツはフィリピンの73・5%が最多。全体の46・9%は7~12歳で来日し、日本生まれは22・4%だった。
世界で唯一、女性による自動車の運転が禁じられていたサウジアラビアで24日、運転を認める法律が施行された。地元メディアによると、日付が変わると、さっそく首都リヤドなどで女性の運転する車が走り、「歴史的な日だ」「運転できることを誇りに思う」などと喜びの声があがった。 サウジでは1990年に内務省が女性の運転を認めないとする声明を出し、これが事実上の法律となった。これまで女性は通勤や買い物、子どもの送り迎えをする際にタクシーを使ったり、運転手を雇ったりしなければならなかった。 西部ジッダに住むハーラ・アリリダさん(54)はこの日、午前7時半ごろにハンドルを握った。これまでは運転手を雇っていたが、昨年9月に解禁が発表された後、日本メーカーの紺色のSUV(スポーツ用多目的車)を購入。朝日新聞の電話取材に、「運転は快適だった。すごく満足している」と、興奮した様子で話した。 サウジでは今月4日から運転免
介護を必要とする高齢者の中には、日本語以外の言語を話す人や、さまざまな歴史的背景を持つ人がいます。そうした高齢者のニーズに応えようという取り組みも始まっています。中国残留邦人の帰国者や在日コリアン向けの介護事業所の活動を紹介します。 埼玉県所沢市の訪問介護事業所「虹」は、利用者15人のうち9人が帰国した中国残留邦人だ。スタッフ9人のうち7人が中国語を話す。 ケアマネジャーで介護福祉士の上條真理子さん(39)がこの春、要介護5の木村和子さん(77)の自宅を訪れた。認知症が出始めた夫も、訪問介護を利用する。上條さんは木村さんが薬をちゃんと飲んでいるかを確かめ、その後ポータブルトイレを片付けた。やりとりはすべて中国語だ。 夫妻はほとんど日本語が話せない。木村さんは戦後、中国で孤児となってとどまった残留孤児で、現地で中国人の夫と結婚。1988年に帰国した。 昨年、木村さんは骨折して介護施設に入った
「はじめまして!」 弾けるような笑顔とまっすぐな目でこちらを見据える。大橋グレース愛喜恵さん(29)。多発性硬化症と重病筋無力症、シェーグレン症候群という3つの難病を抱える。だがNHK Eテレの福祉バラエティー番組「バリバラ」にレギュラー出演し、講演のため全国を飛び回るその姿からは、24時間体制の介助を必要とする難病患者というのが到底信じられない。 1988年、日本人の父とアメリカ人の母のもと、福島県で生まれた。本やバスケが大好きな活発な少女は、中学3年の秋に始めた柔道にのめり込み、高校生になると渡米。北京オリンピックのアメリカ代表候補に選ばれるまでになる。 時を同じくして、身体に謎の異変が起きる。渡米前に左目、渡米後に右目の視力が弱まり、腕もしびれて力が入らなくなっていた。「私の身体に何が起きているんだろう」。一時帰国して検査を受けると、神経の機能に異常が出る難病と診断される。短期間の検
JISの安全色が改正!「ユニバーサルデザインカラー」って何? 4月20日、JIS安全色(JIS Z 9103)が改正されました。日本全体で320万人とも、500万人ともいわれる色弱者に配慮した、カラーユニバーサルデザインの考え方をご紹介します。 JIS安全色(JIS Z 9103)とは? 進入禁止は赤、一方通行は青、非常口のサインは緑……というように、私たちの日常生活は、色や標識によって守られています。このような色や標識は、遠くからでも容易に「禁止」「安全」などの指示内容が一目で認識できるように、JIS Z 9103(図記号-安全色及び安全標識-安全色の色度座標の範囲及び測定方法)が規定されています。 色彩の意味は次のとおり。 赤:防火、停止、禁止、高度の危険 黄赤:危険、航空・船舶の保安施設 黄:注意 緑:安全、衛生、進行 青:用心 赤紫:放射能 白:通路、整頓 黒:標識、警標などの文字
多様な人が共に過ごすインクルーシブな社会を実現するための施策のひとつとして、わたしが重要だと考えているのは、働くことを望む障害のある人が自分らしく働ける文化、土壌や仕組みづくりである。 平成30年4月1日から、障がい者の法定雇用率が引き上げられた。これまでは2%だったが、従業員が45.5人を超える民間企業は、2.2%の雇用率が義務付けられている。今後、平成33年度4月までには、さらに0.1%が引き上げられる予定だ。 雇用率を達成している企業は年々、増加傾向にあるものの、平成29年度の時点ではまだ雇用率達成企業は50%ほどである。 実際に発達障害のある人を採用し、共に働いている方からよく聞かれる質問がある。 「やる気の問題なのか、障害特性なのかがわからない」 「性格なのか、障害なのかがわからない」 「どこまでが配慮なのかわからない」 同様の質問は保護者や園・学校の教員からもよくもらうため、保
国立国際医療研究センター(東京)は、海外との行き来などに伴い国内で広がる可能性がある感染症について、予防や治療に役立つ情報を医療機関などに提供している。沖縄で3月以降、はしか感染が拡大したのを受けてこのほど、はしか流行地を訪問後に体調が悪くなった場合の対処法をイラスト入りでまとめた啓発チラシを、日本語のほか英語、中国語、ベトナム語、ネパール語などで作成し、ホームページ(https://www.dcc-ncgm.info/)で公開した。訪日客らの中には、沖縄観光の後に本州に渡る人もおり、多言語での案内で注意を促す。はしかの主要な症状の説明のほか、受診の際は事前に医療機関に電話で連絡し、他の人に感染を広げないようにするなどの心得を載せている。
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