医療の進歩で「がん=死」でない時代になったからこそ、「がんと仕事」「がんと子育て」といった治療と日常生活の両立支援が重要な時代になりました。朝日新聞の声欄にも、患者や家族から様々な悩みや経験が寄せられています。そこで乳がん経験者で、今は患者の就労相談や両立支援にかかわるキャンサー・ソリューションズ社長の桜井なおみさん(51)に、アドバイスを聞いてみました。 まず、先進的に取り組む企業について尋ねると、厳しい言葉が返ってきました。「治療をしていても仕事と両立できるように支援している、制度が整っているといわれる企業でも、案外ドライなところがあります。情がないところですね」 病気の種類や治療方法、副作用、家族などのサポートなど患者が置かれた状況は違います。会社は一律に適応できるように制度設計をしますが、必要な両立支援は、休みや時短勤務、業務の軽減、配置転換、費用の補助、テレワーク、転勤免除など、
2歳で脳腫瘍(しゅよう)の一つ、脳幹グリオーマが見つかった埼玉県新座市の原田歩夢くんは2013年6月27日、東京の国立成育医療研究センターで抗がん剤治療を始めた。 通院で週1回注射し、5週間に1回は入院で点滴した。しばらくすると、母の瑞江さん(28)が歩夢くんの髪を洗うと毛が抜けていった。「歩夢が頑張っている証拠」と自分に言い聞かせたが、外出するとじろじろ見られた。 抗がん剤は免疫力を低下させる。手足口病になり、入院もした。兄の保育園に感染症の園児がいたら連絡をもらうようにした。 12月8日、MRIで治療効果を確かめると、腫瘍は10%大きくなっていた。治療法は、腫瘍に放射線を照射する方法か抗がん剤の切り替えしかない。主治医の寺島慶太さん(44)は「放射線治療は避けたい」と言った。大脳の広範囲に照射すると発達障害が起こる可能性がある。両親は、週1回の外来で注射する抗がん剤を選んだ。 この頃、
がんにかかり、抗がん剤や放射線を使う治療が始まると、子どもをつくる機能に影響が出ることがある。「将来、子どもが欲しい」と願う患者の希望に沿い、生殖機能を保つために、がんの診療科と産婦人科などとの連携が進みつつある。事前に十分な情報を得て、患者自身や家族がよく考えて納得してから治療を始めることが大切だ。 卵子・受精卵など保存 中部地方の会社員女性(35)は2年前、左乳房にがんが見つかった。婚約中で3カ月後に挙式を控え、頭の中が真っ白になった。 いくつか病院を回り、岐阜大病院を受診。がん自体は小さかったが再発リスクを下げるために全摘し、その後約5年間、女性ホルモンの働きを抑える薬を飲むことになった。 結婚間近と聞いた乳腺外科医は産婦人科医と連携、「できることはやっておきましょう」。手術後に挙式、ホルモン剤を飲み始める前の約3カ月で卵子を2回にわたり採取、受精卵にして凍結した。費用は約100万円
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