クエンティン・タランティーノ監督を突き動かす故深作欣二監督の言葉映画という映画を見尽くしてきたクエンティン・タランティーノが、「最も好きなジャンル」と言ってはばからないのが西部劇、なかでもマカロニ・ウエスタン。ビデオ店の店員だったころから「いつか俺なりのウエスタンを撮りたい」と願ってきただけに、語るべき物語は独創的なものでなければならない。そんな高いハードルをクリアするアイデアが生まれたのは、東京でのことだった。(取材・文・写真/若林ゆり) 「奴隷のヒーローをマカロニ・ウエスタンのスタイルで撮りたいってアイデアは、10年以上前からもっていたんだ。最初の構想は、奴隷が賞金稼ぎになって白人を追うっていうものだった。南北戦争前の南部でね。そうなると西部劇じゃない、南部劇ってことになるんだけどさ(笑)。ただ、具体的にどんなストーリーにしたらいいかはずっとわからなかったんだ。ひらめいたのは、『イング