<トランプ米大統領が中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する意向を表明。その真意は何か、世界や日本にどう影響するのか。小泉悠・未来工学研究所特別研究員と村野将・岡崎研究所研究員が緊急対談で明かした、ここでしか聞けない話> 10月20日、ドナルド・トランプ米大統領は中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する意向を表明した。 INF条約は1987年に米ソで調印。地上配備型の中距離(射程500~5500キロ)の弾道・巡航ミサイルが対象。開発や保有、配備を禁じている。 条約破棄を受けて、「トランプの無謀な軍拡路線」「秘密裏にINF開発を再開したロシアへの牽制」など、さまざまな臆測が飛び交っている。 その真意は何か、世界や日本にどう影響するのか――。本誌11月13日号の特集「戦争リスクで読む国際情勢 世界7大火薬庫」で現代の戦争リスクを分析した未来工学研究所の小泉悠特別研究員(ロシア軍事研究)と、岡崎
ロシアにとっての新たな中東問題 2015年9月にロシアがシリア紛争に介入してから、まもなく丸3年が経とうとしている。この間、ロシアは空軍、特殊部隊、軍事顧問団をシリアに送り込み、合わせて大量の軍事援助を行うことでシリアのアサド政権を支え続けてきた。これによってアサド政権は不完全ながらも支配領域を回復し、もはや同政権を軍事的に打倒することは極めて困難な状況になりつつある。この意味では、ロシアの戦略目標はほぼ成功したと考えられよう。 しかし、ここに来て、ロシアにとって頭の痛い新たな問題が浮上しつつある。ロシアと並んでアサド政権を支えてきたイランの軍事プレゼンスがシリア全体に広がり、これを懸念するイスラエルとの間で一触即発の状況が生まれつつあることがそれだ。イランとの核合意をまとめたオバマ政権とは異なり、新たに誕生したトランプ政権がイランに対して強硬な姿勢を取っていることもそこに拍車を掛けている
7月29日、米国務省は軍縮・不拡散に関する議会向け年次レポートを公表し、この中で「ロシアがINF(中距離核戦力)全廃条約を遵守していない」と指摘した。 1987年に同条約が締結されて以降、初めてのことである。 そこで以下では、そもそもINF条約とは何であり、ロシアがどのような形でこれに違反している可能性があるのかについて解説する。また、この問題についてはロシアも以前から様々な主張を行っていることから、ロシア側の主張も併せて紹介したい。 INF全廃条約成立の経緯RSD-10ピオネールIRBM1970年代、ソ連はRSD-10ピオネール(NATO側の名称はSS-20)と呼ばれる中距離弾道ミサイル(IRBM)の配備を開始した。RSD-10の射程はおよそ5500kmと、大陸間弾道ミサイル(ICBM)にはわずかに及ばない。つまり、米国を攻撃することはできないが、欧州ならばソ連の奥地からも短時間で攻撃で
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