6月2〜4日の日程で開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)は異例ずくめのものだった。 シャングリラ・ダイアローグは、2002年にシンガポール「建国の父」リー・クアンユーが後押しして誕生した、年1回の国際会議。地域の安全保障を議論する主要な国際会議で、アジア諸国や欧米の国防大臣・専門家がこの豪奢なシャングリラ・ホテルに一堂に集う。例年であれば南シナ海をめぐって米中が火花を散らすのだが、トランプ政権のアジア政策が見えないなか、ジェームズ・マティス米国防長官がどのように地域へのコミットメントを示すのかが最大の焦点となった。 「ヒール役」の中国が消えた その裏で目に止まったのが、「ヒール役」といえる中国が消えたことである。過去数年、人民解放軍の副参謀長を送っていた中国が、今年はずっと位の低い軍事科学院副院長の何雷中将の派遣にとどめたのだ。2011年には、現役国防相という大物を送