書評(文献レビュー) 政治外交史 【書評】沈志華著・朱建栄訳『最後の「天朝」~毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮~』 (上下、岩波書店、2016年) April 11, 2017 外交 東アジア 歴史 政治 戦後70年 政治外交検証:書評 評者:川島真(東京大学大学院総合文化研究科教授) 本書刊行の意義 本書は、これまでタブーとされてきた朝鮮戦争をはじめとする中華人民共和国、ソ連、北朝鮮間の関係史を実証的に解明した著作であり、中国で語られてきた毛沢東の対北朝鮮政策に関する政治的なスローガンやプロパガンダに対して、「歴史実証」によって新たな歴史的地平を拓こうとする。社会主義陣営の内側に関わる実証研究であることから、東アジアの冷戦史研究を大きく進めると思われる点も本書の意義だ。 「血の同盟」といわれる中朝関係が果たして朝鮮戦争などを通じていかに描かれたのか、その実態はどのようなものだったのか。こ