<今回の事件では、軍の政治介入に対する市民の忌避感が強く強調されたが、最近のエジプトやタイの政情不安の事例を考慮すると、これが市民社会の二極分化、対立へと発展するおそれを感じさせる>(写真はエルドアン政権を支持して集まったトルコ市民) 先週末、トルコでクーデター未遂事件が発生したとき、筆者は頭を抱えた。 ほんの3カ月前、筆者は『途上国における軍・政治権力・市民社会』(晃陽書房)という研究書(編書)を出版したのだが、そこでトルコは扱わなかったからだ。 理由はちゃんとある。建国の父ムスタファ・ケマル(アタテュルク)が軍主導で国家建設を進めたトルコ共和国は、90年代後半まで政局が揺らぐと軍が出てきて安定化を図るという、クーデター「常連」国だった。一定期間をおいて民政移管するなど、ある意味「模範的」なクーデターであり、多くのアラブ諸国で見られたように、特定政党や個人が軍を私物化するといったことも、