日本が参加すべきかどうかで話題となっているアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、ロシアは3月30日に参加申請をして4月14日に加入し、創設メンバーの一員となった。 ウクライナ危機勃発の後のロシアと中国の「蜜月」関係から見ると、3月31日という締め切りを前にして3月30日というタイミングは納得のいく早さではなく、むしろ逡巡した挙げ句に渋々参加を決定したのではないかと考えられるものである。 そこで本稿では、このタイミングでの参加が決まったのはなぜか、背景を探ることにしよう。 周知の通り、ウクライナ危機の発生後、西側諸国と厳しく対立し外交的に窮地に陥っているロシアは、西側諸国とは距離を置く中国をいろいろな形で頼みとしている節がある。 典型的なのは、ロシア産のエネルギー資源を中国市場に安定的に供給することを確約し、それによりエネルギー資源の欧州部での販路が断たれても、ロシア経済が生き残っていけるよ
「恐怖、利己心(利益)、名誉」で動く国際社会 国家の自己認識は、個人も同じであるが、他国との比較(相関関係)あるいは相対性の上でなされ、自己実現を図って行く傾向が強い。 古代アテネの歴史家ツキジデスは、その不朽の名著『戦史』の中で、国家を動かす「恐怖、利己心(利益)、名誉」の3つの属性を指摘した。 これらの属性が絡み合い、相互作用することによって、常に他国に対する優越を求めようとする力が働くため、絶え間ない摩擦・軋轢や衝突・紛争の世界を生み出してきた。特に、大国間にあっては、覇権獲得の激しい争いが繰り返されてきたのが人類の歴史である。 『大国政治の悲劇』(奥山真司訳、五月書房)の著者である米シカゴ大学教授ジョン・ミアシャイマーは、オフェンシブ・リアリズム論の提唱者として知られる。 その著書によると、国家を超越する権威を持たない無政府状態の国際社会では、国家は互に「恐怖」の認識を強く持ち、そ
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