『アーティストになったから、 国外へ出られた』 これは南米ベネズエラで出会った、若いアーティスト(音楽家)たちのことだ。 ベネズエラはこの数年、アメリカの制裁によるハイパーインフレと、革命と、反政府デモで、混沌の一途をたどっている。日中はバリケードがはられ、犯罪が多く、暴力が溢れ、夜出歩くことは困難だ。もちろん日本人が観光に行くことは薦められていない。 ベネズエラに入国した時、わたしはベネズエラのアーティスト(音楽家)約20名と一緒だった。彼らは、演奏と経験という名目で国外へ出ていた。大量に抱えた歯みがき粉は「帰国したら手に入らないから」とヨーロッパのスーパーで買い占めたらしい。あまりにも高騰する物価に、日用品すら変えない現状だった。 そんな国の環境のなかでも、アーティストである彼らは、各国で演奏をし、旅をすることができた。貧しさと革命の混乱に苛まれた国で海外を見ることが許される、数少ない