防衛大学校教授の倉田秀也氏 そもそも日韓国交正常化交渉は請求権処理についてサンフランシスコ平和条約第4条を受けて行われた。東アジアの戦後処理の広い文脈で、日韓国交正常化はこの平和条約の一部を構成していた。かつて日本が統治したのが朝鮮半島全体であった以上、日韓国交正常化の原則は、来るべき北朝鮮との国交正常化の原則でもなければならなかった。その原則こそ「請求権放棄」だった。 ≪放棄された「請求権」の根拠≫ 国交正常化交渉で韓国は日本統治の「不法性」を主張したが、統治下の朝鮮の一部だった韓国が、その第19条で連合国さえ放棄した「賠償請求権」を主張できるはずはなかった。日本が交戦状態になかった韓国に行う補償は、軍事占領下に置いたフィリピンなどに行った賠償とも自(おの)ずから異なっていた。日本は国交正常化の過程で韓国が後に「賠償請求権」を主張する根拠を与えてはならなかった。