安倍首相はかつて、福島のような事故は「起こり得ない」と語ったことがある。現在はそれより慎重になり、日本を事故のリスクがない空想的な国ではなく、原発の安全性で世界に冠たる国にすると語っている。だが、原発を巡る議論は一部の人が望んだほどには変わっていない。 原発の安全性に議論が集中することの弊害 近く新基準に適合したと判断される見通しの原発が立地する鹿児島県の知事は、中央政府が「安全を保証する」場合に限って、再稼働を支持すると語っている。今年5月には、福井県の裁判所が、原発を再稼働するリスクがゼロであると証明する手立てがない――これは根本的に不可能なこと――との理由で、別の原発の再稼働を差し止めた(この判決は抗告審で覆された)。 安倍首相は痺れを切らしつつあるようで、原子力規制委員会に名を連ねる慎重な地震学者の島崎邦彦氏を、より原発に前向きとされる別の地震学者に交代させた。この人事は政治の介入