前回見てきたのは、米国の核戦略のうち、その「意図」を示す宣言政策に関する記述だが、NPRにおいてより重要度が高いのは、米国の「能力」を司る戦力構成(とそれを支える核関連インフラ)に関する記述である。世界がトランプ大統領の発言やツイートに日夜翻弄されている現状に象徴されるように、宣言政策は短期間で変更される余地があるが、戦力態勢やそれを支えるインフラは、長期間の戦略的投資の積み重ねによって形作られるため一夜にして大幅な増減をすることはできないからだ。NPRのような中長期の戦略文書や予算教書の分析が重要な理由はそこにある。 この点、マティス国防長官はNPR2018の冒頭においてオバマ政権が決定した核戦力の近代化計画*1を「最も費用対効果に優れ、抑止を確実にする手段」として全面的に評価し、それを着実に履行していくことを再確認している。NPRによって近代化計画の継続が強い政治的後押しを受けたことは