オランダ・アムステルダムの性的マイノリティ関連団体を視察。中編では、トランスジェンダーをめぐる課題について取り組むTransgender Network Netherlandの活動などを紹介した。後編では、欧米を中心に広がるサル痘の現状や、性的マイノリティ関連の書籍などをアーカイブする団体について取り上げる。
2022.4.21 追記あり 2. トランスイシューに関する記述について 前のエントリの続きです。こちらのほうが本題。 先に述べたとおり、6節はここだけ「フェミニズムとジェンダー理論」の著作の紹介という形をとっていないという点で異様なのですが、その代わりに語られている著者自身の時代診断のうち、トランスイシューに関する部分は特に問題が多く、「現在こうなっている」と著者が語ることの多くがトランス差別的なクリーシェをなぞっていると私は思います。 ぱっと見で気づいたところだけ順番に引用して指摘していきます。 こんにち、「女性が子どもを産む」という身体的な特徴の描き方のみならず、「母親」という言葉自体が、トランス差別であると批判 さかね(ママ) ない。出産する「トランス男性」や出産できない「トランス女性」に対する排除的表現だからだ。政治的に正しい表現は、「子宮をもつひとが出産する」となる。このように
『社会学評論』*1の72巻4号で、「ジェンダー研究の挑戦」という公募特集*2が組まれています。この記事ではそこに掲載されている千田有紀さんの論文「フェミニズム、ジェンダー論における差異の政治」について、私の簡単な感想を記しておきます。 千田さんはこれまでも(ご本人の意図はどうあれ少なくとも結果としては)トランスジェンダーに対する差別的な言説をエンカレッジしてしまうことになるような文章を書いてきており*3、その事情を知る人たちの間には評論掲載の論文もそうなっていないかという懸念がありました。実際に読んで、残念ながらその懸念が払拭されたとは言い難いという感想を私は持ち、そしてそのことは日本社会学会の会員として表明しておくべきだと考えました。 1. 論文の構成に関する問題 トランスジェンダーについての記述について検討する前に、私にはそもそも千田論文の構成がよく理解できず、結論として何が主張されて
いま日本は、年間4000人以上の人々が名前を変えている。性と名前の不一致に悩むトランスジェンダーの人々や、キラキラ・ネームをきっかけに親子の関係を見つめ直した若者。親から受けた虐待の記憶を断ち切り人生のリセットを期す人、さらに過去に犯した罪を償った後も実名が世間に拡散しいつまでも再出発できない人・・・。番組では、改名することで新しい人生を歩み出したいと願う100人にアプローチ。それぞれの名前や生き方についてインタビューする。 出演者 石井光太さん (ノンフィクション作家) 宮田裕章さん (慶應義塾大学教授) 小林康正さん (京都文教大学教授) 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー) 肇さん(元・王子様さん) 「僕は『王子様』から『肇』に“改名”しました。(母が)私にとっての王子様だからみたいなことを言ってました。名前がキラキラネームというのは、本当に悪い言い方になっちゃう
──清水先生が、そもそもフェミニズムやクィアスタディーズを研究するにいたったきかっけを教えて下さい。 はじめは文学研究者としてシェイクスピアを研究していました。とくに90年代のシェイクスピア研究は、フェミニズムやクィア理論が活発な領域で、それが最初の入り口だと思います。 ──そこには何か、個人的な体験にもとづく問題意識のようなものがあったのでしょうか。 というよりも、純粋に、とくにシェイクスピアの芝居の中にある、演者と観客のあいだ、あるいは作品の中にある、見る/見られるの関係に魅了されました。そうした見る/見られるという視線の関係によって、自分の振る舞い方やあり方が少しずつ規定されたり変わったり、あるいは相手を欺いたりすることがある。そこにはどんな力関係が働いているのかを考えることが、すごく面白かったんです。 もちろん、演劇は観客が見てくれないと成立しないわけですが、シェイクスピアの時代の
自民党本部前で、LGBTへの差別発言に抗議する集会が開かれた/5月30日、東京・永田町(c)朝日新聞社 AERA6月21日号から 今国会で提出が見送られた「LGBT法案」。この法案をめぐる自民党内の動きを見てみると、菅首相の「敵」が党内にも潜んでいることがわかる。AERA 2021年6月21日号から。 【性的少数者をめぐる自民党内外の動きはこちら】 * * * ワクチンや五輪・パラリンピックの成功はいまだ未知数であると同時に、行政の最高権力者であっても、自民党内では派閥を持たない菅首相にとって、党内におけるプレゼンスは極めて限定的だ。それが露呈したのが今国会で提出が見送られた「LGBT法案」だった。五輪憲章で明確に性的指向を理由にした差別を禁止していることから、五輪開催を目指す菅首相にとって同法案は前のめりではないにしても、否定はしない立場だった。 自民党を含む超党派の議員連盟が内容の
性同一性障特例法に関する最高裁決定を受けて、日本の手術要件について海外ニュースとかでも取り上げられ、また人権団体ヒューマンライツウォッチがその問題について報告しています。ところがTwitterなどで意外な事でこれに拒否反応している人達がいるのを見て驚いています。 それは『SRS(性別再判定手術)は断種ではない、なんで違う事に意見するのか理解出来ない』と言ったもの…。 ・SRS(性別再判定手術)は断種を含む手術です。 SRSの中には例えばトランス男性の乳房切除なども含まれますので、すべてが断種という訳ではないですが、SRSに伴うトランス女性の睾丸摘出、また、トランス男性の卵巣、子宮の摘出は間違い無く断種の手術です。 断種とは『だんしゅ【断種】手術などにより生殖能力をなくすこと。※大辞林より』という意味で、 トランスジェンダーに対するSRSでは間違い無くそれにあたります。 また、性同一性障害特
今年はStonewallの蜂起から50周年の年で、東京レインボープライドでもそれを掲げ、また、6月のNYCプライドにもツアーを組んで、TRPのフロートを出してAnniversaryを祝うそうです。 Anniversaryを祝うことは良いことだと思うのですが、何を祝うのか判っているのか不安になることがあります。近年吹き荒れているアンチトランスの風に加えて、TRP界隈からまで『「T」は別だよね。』『何でTが一緒に一緒に居るの?』『ドラァグクイーンの女装とかヤメテ欲しい』こんな声まで聞こえてきます。 また逆に偉そうなアンチLGBTの人が「Tは性同一性障害という疾患だが、LGBは単なる性嗜好である」なんて比べて方をして…どちらにしても「Tは違うだろう」を強調する。こんな状況でStonewallのAnniversaryを祝おうなんて…いったいどこに「プライド」があるのだか? ・ゲイプライドのゲイはど
性社会・文化史(ジェンダー/セクシュアリティの歴史)の研究者としての活動、研究成果の一端、トランスジェンダーとしての日常と関心事を記していこうと思います。 2月20日(水) 平成30年間のトランスジェンダー関係の略年表を作った。 以下、年表から読み取れること。 ① 1990年代には、ニューハーフ、女装などトランスジェンダー・カルチャーの活動が活発だったこと。 ② 2000年前後に、性別移行を病理とする「性同一性障害」の流れが急速に展開すること。 ③ 2003~2005年に、女装、ニューハーフ系の雑誌が次々に廃刊になること。 ④ 2008年頃から、病理化のもとで逼塞させられていたトランスジェンダー・カルチャーの復活・再生(リニューアル・21世紀型)が始まること。 ⑤ 2014年頃から、性別移行の病理化に反対す潮流が日本でもはっきりしてくること。 【追記(4月5日)】加筆・修正版はこちら(↓)
社会が多様化するなかで最近、「多様性を受容する」ということがさまざまな場面で言われるようになった。しかし私たちは一方で、すでに自然に多様性を受容している。その証左となるのが、東京・新宿という街だ。トランスウーマンの性社会・文化史研究者、三橋順子さんが解説する。 性と民族の多様性に寛容な街 私が新宿区役所通りの女装スナックやニューハーフパブのお手伝いホステスとして、新宿の街に足しげく通っていたのは1995~2003年ごろだから、もうずいぶん昔のことだ。 店に出る前には、新宿通り界隈やサブナード(地下街)の店で服や靴を買い、「伊勢丹」で化粧品を購入して売り場のスタッフに最新流行の化粧テクニックを教えてもらった。夏にトールサイズの浴衣や水着を買ったのも「伊勢丹」や「丸井」だった。東口広場にときどき出没する怪しい、そしてたぶん違法なユダヤ人露天商からシルバー?の指輪を買ったこともあった。仲間と焼肉
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LGBTと精神疾患 同性愛は精神疾患ではないし治療の対象にもならない。 このことは、現代の日本ではほぼ常識となりつつあるだろう。 性的なことがらに関するマイノリティ(少数者)に対して差別的な言動をすることは許されないという社会道徳・規範は21世紀に入って、日本も含めた先進諸国で急速に広がった。 誰かの性的あり方を自分と違っているというだけの理由で病気扱いすることも差別の一種とみなされるだろう。 だが、からだの性とこころの性が一致しない性同一性障害(性別違和)・トランスジェンダーの人々の場合、医療との関係は微妙だった。 医療的な処置――からだの性をこころの性に合わせるために、男性ホルモン・女性ホルモンを用いたり、性別適合手術をしたりすること――をときに必要とする点で、「病名」や「障害名」と切り離せないからだ。 とはいえ、最近トランスジェンダーをめぐって大きな変化があった。2018年6月には、
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