2022.4.21 追記あり 2. トランスイシューに関する記述について 前のエントリの続きです。こちらのほうが本題。 先に述べたとおり、6節はここだけ「フェミニズムとジェンダー理論」の著作の紹介という形をとっていないという点で異様なのですが、その代わりに語られている著者自身の時代診断のうち、トランスイシューに関する部分は特に問題が多く、「現在こうなっている」と著者が語ることの多くがトランス差別的なクリーシェをなぞっていると私は思います。 ぱっと見で気づいたところだけ順番に引用して指摘していきます。 こんにち、「女性が子どもを産む」という身体的な特徴の描き方のみならず、「母親」という言葉自体が、トランス差別であると批判 さかね(ママ) ない。出産する「トランス男性」や出産できない「トランス女性」に対する排除的表現だからだ。政治的に正しい表現は、「子宮をもつひとが出産する」となる。このように
『社会学評論』*1の72巻4号で、「ジェンダー研究の挑戦」という公募特集*2が組まれています。この記事ではそこに掲載されている千田有紀さんの論文「フェミニズム、ジェンダー論における差異の政治」について、私の簡単な感想を記しておきます。 千田さんはこれまでも(ご本人の意図はどうあれ少なくとも結果としては)トランスジェンダーに対する差別的な言説をエンカレッジしてしまうことになるような文章を書いてきており*3、その事情を知る人たちの間には評論掲載の論文もそうなっていないかという懸念がありました。実際に読んで、残念ながらその懸念が払拭されたとは言い難いという感想を私は持ち、そしてそのことは日本社会学会の会員として表明しておくべきだと考えました。 1. 論文の構成に関する問題 トランスジェンダーについての記述について検討する前に、私にはそもそも千田論文の構成がよく理解できず、結論として何が主張されて
──清水先生が、そもそもフェミニズムやクィアスタディーズを研究するにいたったきかっけを教えて下さい。 はじめは文学研究者としてシェイクスピアを研究していました。とくに90年代のシェイクスピア研究は、フェミニズムやクィア理論が活発な領域で、それが最初の入り口だと思います。 ──そこには何か、個人的な体験にもとづく問題意識のようなものがあったのでしょうか。 というよりも、純粋に、とくにシェイクスピアの芝居の中にある、演者と観客のあいだ、あるいは作品の中にある、見る/見られるの関係に魅了されました。そうした見る/見られるという視線の関係によって、自分の振る舞い方やあり方が少しずつ規定されたり変わったり、あるいは相手を欺いたりすることがある。そこにはどんな力関係が働いているのかを考えることが、すごく面白かったんです。 もちろん、演劇は観客が見てくれないと成立しないわけですが、シェイクスピアの時代の
3月28日,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に当たっていたドイツ・ヘッセン州のシェーファー財務相(54)が死亡した.遺書もあり,警察は自殺とみている.同州のボウフィエー首相によると,財政的な支援への市民の期待に応えられるか苦悩していたとされる.危機的な社会状況では,大臣だけではなく,一般の中でも自殺者が増えることが知られている.3月11日,厚生労働省も,各都道府県・指定都市の自殺対策を主管する部局あてに「COVID-19防止に関連した生活困窮者への相談支援」を求めた. COVID-19患者の急増に備えて,岡山大学病院でも,他の患者の受診抑制が行われている.性同一性障害当事者を日本中から受け入れているジェンダークリニックも例外ではなく,受診の延期要請やFAXでの処方箋送付などが始まった.もともと不安やうつが見られる方が多いが,最近の外来では,社会全体の重苦しい雰囲気のもとで不
日本学術会議主催公開講演会「身体・性差・ジェンダー生物学とジェンダー学の対話ー」に参加してきました。 事前参加申し込みが定員に達して断られた方もあるようで、確かに会場はほぼ満杯という盛況ぶりでした。 主催者側から江原由美子先生と黒川会長のご挨拶があり、総合司会の後藤俊夫先生が猪口邦子大臣からのメッセージを読み上げて始まった。 講演は、以下の通り。 原ひろ子「男女共同参画社会の実現と学術の役割」 上野千鶴子「ジェンダー概念の意義と効果」 束村博子「女と男はどう違う?ー生物学的視点からー」 大内尉義「性差医療の可能性」 井谷恵子「ジェンダー研究からみた体育・スポーツの可能性と課題」 休憩を挟んで、予め予定されたディスカッサント(以下)からのコメントがあった。 竹村和子 長谷川真理子 黒田公美 五十嵐隆 加賀谷淳子 その後、ようやく総合討論となって、フロアからも質問・コメントができるようになり、
性社会・文化史(ジェンダー/セクシュアリティの歴史)の研究者としての活動、研究成果の一端、トランスジェンダーとしての日常と関心事を記していこうと思います。 2月20日(水) 平成30年間のトランスジェンダー関係の略年表を作った。 以下、年表から読み取れること。 ① 1990年代には、ニューハーフ、女装などトランスジェンダー・カルチャーの活動が活発だったこと。 ② 2000年前後に、性別移行を病理とする「性同一性障害」の流れが急速に展開すること。 ③ 2003~2005年に、女装、ニューハーフ系の雑誌が次々に廃刊になること。 ④ 2008年頃から、病理化のもとで逼塞させられていたトランスジェンダー・カルチャーの復活・再生(リニューアル・21世紀型)が始まること。 ⑤ 2014年頃から、性別移行の病理化に反対す潮流が日本でもはっきりしてくること。 【追記(4月5日)】加筆・修正版はこちら(↓)
昨年のお茶の水大学がトランス女性の学生を受け入れるとの発表以後、Twitter界隈を中心にトランス女性に対する攻撃的な意見がどんどん増えていくようになって、トランスフォビア(トランスジェンダーに対する嫌悪・恐怖)が表面化したことでダメージを受けている人も多くて、正直日本も結構酷い国だと改めて思っている。 私が1996年にトランスジェンダーカフェをオープンした時に考えていたのは『トランスジェンダーって何?』ということを一緒に調べてくれる人を探すため、そして、トランスジェンダーのサバイバルを一緒に考えてくれる人を探すためそんな感じだったのですが、とにかく、トランスジェンダーはマイノリティであり、生きることが簡単では無いというところからスタートした訳です。 ・何を言われようがトランスジェンダーの中身を問う気は無い 私自身、色々なトランスジェンダーの人に会ってきて、正直『これはダメだろう』と思うタ
2019.01.19 18:05 人々のトランスジェンダー嫌悪が少なくなれば、ジェンダー平等感覚の形成は進む ○1 ネット言説やネットアンケートでは分からないこと 現在、トランスジェンダーの人々(特にトランス女性(MtF))に対する嫌悪の表明が、インターネット空間で広がっています。 「フェミニスト」を名乗る人の中に、そうした表明を支持する人々が目立つ状況にもあります。 また、政界に復帰を目論む松浦大悟さんは、あたかもフェミニストの総意を仮託されたかのような発言をしました。フェミニストと(それは本来不可分であるはずの)差別の廃絶との間にくさびを打ち、ふたつを分断させようとしています。また、「法案を正しく読むこと」は、政治家の資質として決定的に重要な能力の1つであると思いますが、誤読の指摘にはほとんど応じていません(他者からの指摘は、ほとんどすべて「それは極論です」で済ませているか、アカウント
2018-10-21 LGBTの4割が就活時にハラスメントを経験。約半数がセクシュアリティを「伝えたくない」と回答、その理由は。 今年で3回目となる、LGBTと就活・就労をテーマにしたイベント「RAINBOW CROSSING TOKYO 2018」が東京大学で開催。LGBTの当事者や企業担当者など約800人が参加した。 主催団体の認定NPO法人ReBitは、就職活動を経験したLGBTを対象に行った調査を実施。LGBTが就活時に経験する困難に関するデータを公開した。 認定NPO法人代表の藥師実芳氏 1. LGBTの40%が、就活の選考時にSOGIに由来した困難やハラスメントを経験している 2. トランスジェンダーの65%が性別違和に由来した困難に直面している 性別違和に由来した困難には、性自認と異なるスーツ・服装、髪型、化粧をしなくてはならず困った、エントリーシートや履歴書に性別記載が必須
夏休み前の全校集会で体育館に整列した宮崎市立小戸小の児童。混合名簿を導入したが、整列は中学年が男女混合、高学年は男女別だった=2018年7月20日午前10時31分、塩月由香撮影 男女平等の観点から学級の出席名簿を男女の区別なく50音順に並べる「混合名簿」は、堺市が全市立小中学校で実施して今年で25年になる。大都市で広がった混合名簿は、九州・山口では自治体によって調査時期がまちまちだが、実施率にばらつきがみられる。昨年度まで公立小中学校の1割しか採用していなかった宮崎県では、母親たちの訴えを機に今年度は5割以上に急増した。ただ、長く慣例として続いた制度変更には困惑の声も漏れる。【塩月由香】 「これまで『男のくせに』『女のくせに』と言われたことはないですか」。今年4月6日、宮崎市立小戸(おど)小学校の始業式。山口邦子教諭(53)が問いかけると、数人が手を挙げた。山口教諭は「これから男女一緒の名
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