わたしたちは孤独だ。人口が70億を超え、世界中に生息域を広げたとしても、現在の地球上にはホモ属に分類される種はサピエンス、つまり現生人類であるわたしたちだけ。ライオンにはジャガーやトラのように同じヒョウ属に分類される仲間がいるのに、サピエンスは系統樹上で一人ぼっちなのだ。 かつて、人類は孤独ではなかった。そもそも「人類」とはホモ属に分類されるすべての動物を指す言葉であり、人類には多くの種が存在していた。東アフリカに人類が誕生して以来、ヨーロッパ及びアジア西部にホモ・ネアンデルターレンシスが、ジャワ島にホモ・ソロエンシスがいたように、あらゆる場所に多くの種が分布していた。ホモ・エレクトスのようにサピエンスよりも遥かに長い期間にわたって生き延びた種もいた。 なぜ人類の中でサピエンスだけが生き残り、文明を築き上げることができたのか。歴史学者である著者は、人類誕生の瞬間から歴史を振り返ることで、こ