HOME> 書評・最新書評> 負債論―貨幣と暴力の5000年 [著]デヴィッド・グレーバー [監訳]酒井隆史 [訳]高祖岩三郎、佐々木夏子 ■ラディカルに「神話」を解体 お金って謎。最近ますますわからない。貧乏人向け高金利住宅ローンが準優良(サブプライム)で、それを証券にして売るって、なにそれ。 本書は経済学者ではなく、人類学者の負債論。なにしろ事例がおもしろい。ヨーロッパを中心に、古代インドや中国、アフリカや南米の先住民族、日本人も顔を出す。借金の正体を求め、法律、神学、文学、哲学と数多(あまた)の資料の頁(ページ)をめくりまくる。 たとえば利子。紀元前2、3千年のメソポタミアにはもう有利子貸付(かしつけ)が根づいていた。相互扶助こそ人間の証し、あげた肉に礼をいわれるのも上下関係になるから嫌、というイヌイットには信じがたい行いだ。妻子を奴隷として売り飛ばすなんてことが「偉大な農業文明」