「社員は悪くありませんから!」 100年の歴史を持つ企業の社長は記者会見で声を絞り出して大粒の涙を流し、巨大証券会社は、3兆5000億円という多額の負債を抱えて破綻した。グループ会社を含め“悪くない”社員1万人以上が職を失った。 「悪くないどころか、今、元・山一證券の人たちは様々な分野で活躍しています。それだけ実力のある人が集まった会社だったということでしょう。それが、『アナザーストーリーズ』でこのテーマを取り上げた理由の一つです」。NHKの番組プロデューサー、久保健一は言う。 1997年11月24日、山一證券はそれ以外になくなった最後の選択肢、自主廃業を選んだ。週刊東洋経済に不正疑惑を追及する記事の第一弾が掲載されたのが1997年4月、総会屋の利益供与の疑いで家宅捜索を受けたのが7月、前の社長が逮捕されたのが9月。そして迎えた11月のできごとだ。 自主廃業と82人の部下 永野修身は39歳