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ブックマーク / booklog.kinokuniya.co.jp (10)

  • 京都大学大学院経済学研究科 教授・根井雅弘の書評ブログ : 『オリンピアと嘆きの天使 ヒトラーと映画女優たち』中川右介(毎日新聞出版)

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「二人の「大物」―-リーフェンシュタールとディートリッヒ」 レニ・リーフェンシュタール(1902-2003、舞踏家から映画女優を経て映画監督へ。1936年のベルリン・オリンピックの記録映画『オリンピア』で知られる)と、マルレーネ・ディートリッヒ(1901-92、『嘆きの天使』『上海特急』『モロッコ』などで知られるドイツ出身の女優・歌手)を対比させたはあまり読んだことはない(ふつうは「マレーネ」と表記するが、書の読み方に従う)。実際、内外にその種のはほとんどないらしい。着眼点がよい。 リーフェンシュタールは、舞踏家に始まって、アルノルト・ファンクと組んだ数々の山岳映画への出演などを経て、ナチス・ドイツのプロパガンダ映画というべき『オリンピア』(第一部「民族の祭典」、第二部「美の祭典」)の監督にまで上り詰めたが、その道のりは決して平坦ではなかった。もっとも、

    京都大学大学院経済学研究科 教授・根井雅弘の書評ブログ : 『オリンピアと嘆きの天使 ヒトラーと映画女優たち』中川右介(毎日新聞出版)
  • 『アメリカ遊学記』都留重人(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「在りし日のアメリカ遊学記」 都留重人(1912-2006)が1950年に書いた『アメリカ遊学記』(岩波新書)がアンコール復刊された。今となっては古いところもあるかもしれないが、約11年間に及ぶアメリカ滞在記は、20世紀前半のアメリカを知るには貴重な記録ともいえる。 都留がアメリカ留学に旅立ったのは1931年9月だったが、当初はウィスコンシン州の片田舎アプルトンに滞在し、ローレンス・カレッジにて2年間学んだ。アメリカに留学したのは、旧制八高の反帝同盟事件にかかわって除籍になり、日でそれ以上の高等教育を受けることができなくなったからである。「当初は」と言ったのは、いずれドイツに渡って学びたいという気持が強かったからだが、それはもろもろの事情(ヒトラーの台頭にみられる欧州情勢の悪化など)で不可能になったので、「図らずも」11年間もアメリカで学ぶことになった。 当

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  • 『ケネーからスラッファへ―忘れえぬ経済学者たち』菱山泉(名古屋大学出版会) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「経済学における客観主義―スラッファ没後30年」 今年は、イタリア出身の経済学者ピエロ・スラッファ(1898-1983)没後30年の年でもある。彼は若き日にイギリスの経済学界を揺るがした論文「競争的条件の下での収穫の法則」(1926年)で世界的に有名になったが、イギリスのケンブリッジ大学で研究生活を送るようになってからは、ライフワーク『商品による商品の生産』(1960年)の完成まで長い年月をかけて思索を続けた稀有のひとである。書(菱山泉著『ケネーからスラッファへ』名古屋大学出版会、1990年)は、わが国におけるスラッファ研究の権威者であった菱山泉(1923-2007)がスラッファを中心とする経済学史上の第一級の理論家を取り上げながら、経済学における客観主義の意義を平易に語った名著である。 「客観主義」というからには「主観主義」があるはずだが、書では、有名な

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  • 『オーケストラは未来をつくる マイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団の挑戦』潮博恵(アルテスパブリッシング) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「MTTとサンフランシスコ響の挑戦」 マイケル・ティルソン・トーマス(しばしばMTTと略称される)は、レナード・バーンスタイン亡きあと、アメリカのクラシック音楽界を担ってきた鬼才のひとりだが、書(潮博恵『オーケストラは未来をつくる』アルテスパブリッシング、2013年)は、MTTとサンフランシスコ交響楽団がどのようにクラシック音楽の未来を切り開こうとしているのかに焦点を当てた好著である。 私がMTTの演奏を初めて聴いたのは、彼がロンドン交響楽団の首席指揮者をつとめていた頃だから、ずいぶん前の話である。MTTの指揮ぶりには好感をもったが、その頃はまだカラヤンやバーンスタインが健在だったので、正直MTTの録音や演奏を注視する暇はなかった。書を読む限り、著者がMTTにとくに関心を寄せるようになったのも比較的最近のこと(2006年12月、MTTとサンフランシスコ響を

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  • 『カザルスと国際政治 カタルーニャの大地から世界へ』細田晴子(吉田書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「音楽はビジネスではなく、聖職(カザルス)」 パブロ・カザルス(1876-1973)は、20世紀最大のチェリストである。クラシック音楽のファンなら、そのことは誰でも知っている。しかし、書(細田晴子著『カザルスと国際政治-カタルーニャの大地から世界へ』吉田書店、2013年)のテーマは音楽そのものではなく、「国際政治」とのかかわりである。音楽家と政治は全く別と考えたいひとも少なくないが、フルトヴェングラーとナチスとの関係のように、意識的にせよ無意識的にせよ、両者がかかわらざるを得ない時代があったことも事実である。カザルスの場合は、スペインのカタルーニャに生まれたことがその運命を左右したと言ってもよいだろう。 カザルスは、20世紀の初め、パリにて「文化国際主義」の香りを吸い込んだ音楽家であった。彼は、画家ドガ、政治家クレマンソー、作家ロラン、哲学者ベルクソンたちと

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  • 『「幸せ」の経済学』橘木俊詔(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「「幸せ」とは何か」 「幸せ」とは何か――この問題に答えるのは難しい。経済学者は国際比較をするとき、一人当たりの所得に注目しがちだが、この方法は昔から経済学者以外の人たちから批判されてきた。それゆえ、経済学者も過去数十年「幸せ」を測るためのいろいろな指標を考案してきたのだが、一人当たりの所得ほど人口に膾炙しているとは言えないようだ。 書(橘木俊詔著『「幸せ」の経済学』岩波現代全書、2013年)で最初に紹介されているのは、イギリスのレスター大学が178か国を対象におこなった研究(2007年)である(同書、14ページ)。この調査は、(1)良好な健康管理、(2)高いGDP、(3)教育の機会、(4)景観の芸術的美しさ、(5)国民の強い同一性、(6)国民の信仰心、などの基準をもとに国々の幸福度をランキングしている。それをみると、第1位はデンマークであり、スイス、オース

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  • 『資本理論とケインズ経済学』J・ロビンソン(日本経済評論社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「ジョーン・ロビンソン没後30年」 今年は、イギリスの女性経済学者ジョーン・ロビンソン(1903-83)没後30年の年に当たっている。ケインズの愛弟子のひとりで、生前は「ノーベル経済学賞」(注1)の受賞候補に何度も挙げられながらも、結局、その栄誉に浴することはなかった。彼女はみずから「左派ケインジアン」と名乗ったいたが、「左翼」であること自体は、いまの時代にはとくに魅力にはならないだろう。だが、彼女の学問の評価は「左翼」であったこととは別に考えなければならない。もちろん、彼女の支持者には政治的にも左派であったひとが多いのは事実だが、私の恩師(故菱山泉・京都大学名誉教授)はそうではなかった。むしろ「通説」を何の疑問も抱かずにただ教え続けるだけの学問的態度に飽き足らず、すべてを根的に考え直す姿勢に共感していたのだと思う。これは、ジョーン・ロビンソンの「盟友」であ

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  • 『日本経済の憂鬱―デフレ不況の政治経済学』佐和隆光(ダイヤモンド社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「経済学者の批判精神」 佐和隆光氏(滋賀大学学長)の新刊(『日経済の憂』ダイヤモンド社、2013年)を久しぶりに手にとった。学長職は激務である。京都大学教授時代は年に数冊のが出ていたが、さすがに最近はあまりを出していなかったような記憶がある。 書は、「失われた20年」の政治経済学的総括を試みたものだが、全体を通読して、過去の話よりは安倍首相の経済政策(いわゆる「アベノミクス」)に対する懐疑的な見解表明のほうが印象に残った。もっとも、著者は、アベノミクスが「壮大な社会実験」であり、その最終的な評価が時期尚早であることは認めている。それでも、現時点での経済学者としての知見から、アベノミクスのいくつかの問題点を指摘しているのがわかるだろう。 アベノミクスとは、新聞や雑誌で何度も取り上げられたように、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する

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  • 『新自由主義の帰結』服部茂幸(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「”新自由主義" への戦闘宣言」 著者(服部茂幸氏)はポスト・ケインズ派経済学の研究や最近の量的緩和政策批判などで極めて精力的な活動を続けている経済学者だが、書(『新自由主義の帰結―なぜ世界経済は停滞するのか』岩波新書、2013年)は、一連の仕事を一般の読者にも近づきやすい形にまとめた話題作である。 書は、全体を通じて、新自由主義の経済学に基づく政策が危機を拡大させたことを厳しく批判しようとしているが、著者によれば、新自由主義とは、ケインズ主義や福祉国家による民間の経済活動への余計な介入を廃し、市場メカニズムによる効率的な資源配分を信頼する思想であり、その主な政策は、金融の規制緩和、供給サイドの重視、富の再分配よりも「トリクル・ダウン」(富裕者の優遇によって経済を活性化されれば、富が貧困層にも「滴り落ちる」という説)などに代表されるという。これだけでは、新

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  • 『ハイエク 「保守」との訣別』楠茂樹 楠美佐子(中央公論新社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋ウェブストアで購入 「ハイエク社会哲学への招待」 ハイエクは現代経済思想史においてケインズとともに最も有名な名前のひとつだが、彼の思想は経済学というよりは社会哲学全般にまで及ぶ広さをもっている。一昔前は、ハイエクよりもケインズのほうが圧倒的に人気があったが、サッチャリズムやレーガノミクスの流行を経た1980年代以降、ケインズ主義や福祉国家を批判するハイエクのが日でもよく売れるようになった。ハイエクはフリードマンとともにしばしば「保守主義」の思想家のように紹介されるが、彼自身は自分の社会哲学が「保守的」だとは考えていなかった。なぜか。書(楠茂樹・楠美佐子『ハイエク―「保守」との訣別』中公選書、2013年)は、この疑問に真正面から答えようとした好著である。 初期のハイエクは、『価格と生産』(1931年)に代表されるように、景気循環論や貨幣理論の専門家として知られていた。書も最

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