誰のため、何のための「改正」? 精神保健福祉法改正の構造的問題 竹端寛 障害者福祉政策 / 福祉社会学 福祉 #精神保健福祉法#社会福祉 本来の趣旨に添うならば 一般的に、法律は現実の後追いである。法律で対応できない・法律が想起していなかった、現に起こっている新しい問題に対応するためには、法律の改正が時として必要になる。ただ、それが「誰のため」「何のため」か、で改正される内容が大きく異なってくる。2017年の通常国会で審議されている「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下、「精神保健福祉法」という。)の改正も、この根本の部分で構造的な課題を抱えている。 まず、精神保健福祉法とは、何のための法律なのだろうか。法第一条には、次のように書かれている。 「この法律は、精神障害者の医療及び保護を行い、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)と相
相模原市で起きた障害者殺傷事件を受け、措置入院から退院した患者の支援の強化などを盛り込んだ法律の改正案について、障害者の団体が25日集会を開き、「精神障害が犯罪につながるかのような印象を与え、障害者への偏見を生む」などとして、反対の声を挙げました。 これについて25日、全国14の障害者団体などが東京都内で集会を開き、およそ250人が参加しました。この中で、障害者団体の佐藤聡事務局長が、「精神障害によって事件が引き起こされたことを前提としているかのようで、障害者への偏見を助長する」と指摘しました。 また、大阪の精神障害の女性は、「退院後、どこに住んで何をしているか、自治体に情報が引き継がれていくのは人権無視で監視されているようです」と訴えました。集会では、さまざまな障害者団体が法案に反対を表明し、国会に働きかけていくことを確認しました。 京都から参加した精神障害の男性は、「精神障害者は犯罪を
小さないのち 大切な君 ネット空間で発せられるSOSをキャッチし、自殺予防の呼びかけにつなげる活動が始まっている。 NPO法人OVA(オーヴァ)(東京)は13年7月から、検索ワードに連動して広告が表示される「リスティング広告」を利用し、予防を呼びかける取り組みを首都圏のごく一部の地域で始めた。対象地域にいる人が「死にたい」といった気持ちや、自殺に関連する用語など数百のキーワードを検索すると、OVAのサイトが表示され、悩み相談をメールで受け付けるしくみだ。 OVAからは「今、あなたが抱えていることを聞かせてもらえますか?」「生活状況や体調など、良ければ教えてください」などとメッセージを送りつつ、行政の相談窓口や精神科クリニックに行くことを勧める。心理的な抵抗を感じる人のために、精神科に予約するときに読み上げる文章をつくることもある。 「部活の先生に嫌われていて、毎日毎日、私だけひどく怒られる
岩手、宮城、福島の東北3県で東日本大震災(2011年)直後に生まれた子どもとその母親を対象に、文部科学省研究班(代表=八木淳子・岩手医科大講師)が実施した調査で、72人の母親のうち21人がうつなど精神面の不調を抱えていることが分かった。親の抑うつや不安状態は、子どもの発達の遅れなどにつながる可能性があり、専門家は子どもの被災の有無にかかわらず、子育て家庭へのケアの充実を求めている。(3面にクローズアップ) 大きな災害の直後に生まれた子どもの発達環境に関する国内調査は初めて。研究班は15年10月~16年3月、3県の11年度生まれの子どもと母親計72組に調査を実施した。津波被害が大きかった沿岸部にある保育所で当時3歳児クラスに在籍し、調査への協力を申し出た母子が対象。県別では岩手30組、宮城16組、福島26組。
塩崎厚生労働大臣は、措置入院患者の支援強化などを盛り込んだ精神保健福祉法の改正案をめぐり、厚生労働省が法改正の趣旨を説明する概要資料を修正したことに野党側が反発していることについて、修正の趣旨を丁寧に説明していく考えを示しました。 これを受け、厚生労働省は概要資料から、この文言を削除して修正しましたが、野党側は法案の趣旨説明のやり直しなどを求めています。 塩崎厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、「国会提出前の事前説明に使っていた概要資料の内容と、委員会で答弁した内容に差があるという指摘や、法案と関係がない文言は削除すべきという指摘があったことを受けたものだ」と述べました。 そのうえで、「法改正の趣旨は、措置入院患者の退院後の医療などの支援の充実を図ることだ。犯罪防止ための法案との誤解を招かないようにすることが大事だという判断から修正した。さらに丁寧な説明を心がけていかなければならない」と
ギャンブル依存症からの回復を支援する認定NPO法人「ワンデーポート」(横浜市)が、回復プログラムにランニングを採り入れている。賭け事にのめり込んだ人たちが走ることに熱中。生活が充実して考えが前向きになり、体づくりにつながる「一石二鳥」の効果が出ているという。 タッタッタッタッ――。4月上旬、東京・皇居周辺で、黄色いTシャツのランナーたちが足音を響かせていた。ギャンブル依存症の経験を持つ、ワンデーポートの入所者や元入所者だ。 「自分でも不思議だが、マラソンでギャンブルが必要なくなった」。30代の男性会社員は、引き締まった顔に白い歯をのぞかせた。 この男性は社会人2年目のとき、仕事のストレスから競馬にのめり込んだ。平日は職場のパソコンで地方競馬に賭け、土日は負けを取り戻そうと場外の馬券売り場へ。給料をつぎ込み、同僚たちにウソをついては金を借りた。人事担当者に問い詰められ、会社を休職。5年ほど前
本年2月28日、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(以下「本法案」という。)が今国会に提出された。 本法案は、昨年政府が設置した「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」の報告書を受けて、措置都道府県に措置入院者の退院後支援計画の作成を義務付けるものであるが、同計画の作成に関わる精神障害者支援地域協議会に警察等、医療・福祉とは関係のない機関が参加しうる制度となっている。当連合会は、昨年、神奈川県相模原市で発生した障害者支援施設における殺傷事件に関連して、措置入院制度の課題を事件の再発防止策と結び付けることは、精神障がいのある人に対する差別や社会的偏見を助長しかねないだけでなく、医療や福祉に犯罪の予防という保安的側面を背負わせ、障がいのある人に対する監視を強めることになりかねないとの懸念を表明した。そこで、この制度については、退院後支援計
厚生労働省は13日、参院で審議中の精神保健福祉法改正案の趣旨説明文の一部を削除したと与野党に伝えた。審議途中で政府が一方的に変更するのは異例で、この日の参院厚労委員会は紛糾。塩崎恭久厚労相が謝罪した。介護保険法改正案の採決を強行した衆院に続く連日の厚労委の混乱となった。 削除したのは、議員説明に使う法案の概要説明文書で、相模原市の障害者殺傷事件に言及し「二度と同様の事件が発生しないよう法整備を行う」と記した部分。同省ホームページにも載せていたが、厚労省の担当者は「誤解を招く表現だったので削った」とする。 法案には精神障害者支援地域協議会に警察が関与する仕組みが入っている。これに野党などが「犯罪防止のための監視」につながるなどと批判していた。塩崎氏は委員会で「事件を一つの契機に措置入院制度の問題点を見直すもの」として事件をきっかけに改正するが、患者のための支援策だと強調。その上で「大変申し訳
相模原市で起きた障害者殺傷事件を受けた再発防止策を盛り込んだ精神保健福祉法改正案が7日、参院本会議で審議入りした。同法に基づく措置入院を解除された患者に支援を継続するよう自治体に義務づけるのが柱で、政府は今国会での成立を目指す。 本会議で塩崎恭久厚生労働相は「措置入院から退院した患者に対して継続的な支援を確実に行えるようにする」と説明し、理解を求めた。これに対し、民進党の川田龍平氏は一定の評価をしつつ「犯罪防止が法改正の趣旨の一部というのは障害者の差別偏見につながり、筋違いだ」と述べた。 法案では、保健所がある自治体に精神障害者支援地域協議会の設置も義務づけている。協議会では、措置入院している患者本人や家族を交えた調整会議(個別ケース検討会議)を開き、退院後の支援計画を作る。 警察や病院、福祉事業所などが参加する代表者会議も開くことを義務づける。患者の薬物使用が分かった場合の情報共有や、固
地域移行には、福祉サービスが不可欠。NPO法人が運営する作業所でおもちゃの部品を作る利用者 =千葉県旭市のひまわり工房 入院期間は長く、退院後の患者支援は手薄-。そんな日本の精神科医療を見直す動きがある。看護師や作業療法士らが、退院した患者を訪問する「アウトリーチ」で、服薬継続や就労を支援し、患者の日常生活を軌道に乗せる。アウトリーチの実績のある医療機関では、救急搬送や本人同意のない入院が減る効果も出ている。最先端の取り組みを取材した。(佐藤好美) ◇ 千葉県旭市の国保旭中央病院(田中信孝病院長)の「こころの医療センター」では毎朝、恒例のミーティングが開かれる。 集まるのは、約10人の「訪問・地域生活支援チーム」のメンバー。看護師や作業療法士、就労支援の専門家などが、前日訪問した患者の情報などを担当医らと共有する。 ある患者には気分の落ち込みが見られた。「少し怪しいですが、本人は酒は飲んで
左から、富田三樹生・多摩あおば病院長、池原毅和・弁護士、長谷川利夫・杏林大学教授 神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で昨年7月に発生した殺傷事件の再発防止策とされる精神保健福祉法改正案に関連し、反対集会が3月24日、参議院議員会館で開かれた。措置入院から退院した人のフォローを強化する改正内容を、弁護士、精神科医らが「治安維持を目的としたものだ。到底許されない」と批判した。 本来の目的に合わず 病棟転換型居住系施設について考える会(連絡先=長谷川利夫・杏林大教授)の主催で、約100人が参加した。精神障害作業療法学が専門の長谷川教授は、「改正案の趣旨を読むと、同法を治安目的に用いている。本来の法の目的と合致しない」と憤った。 退院後支援計画を作るための個別ケース会議の参加メンバーについて、厚労省の説明資料が「必要に応じて本人も参加する」としている点には「本人抜きで支援計
厚生労働省は31日のギャンブル依存症対策に関する関係閣僚会議で、都市部の成人の2.7%が生涯で競馬やパチンコなどへのギャンブル依存が疑われる状態になったことがあるとの調査結果を公表した。単純計算すると全国で約280万人に上ることになる。過去1年に限れば0.6%(約60万人に相当)だった。 午後に調査を実施した同省の研究班が記者会見し、詳細を発表する。 ギャンブル依存症は、ギャンブルによって経済的、社会的、精神的な問題が生じる状態になってもやめることができない病気。調査は昨年から国立病院機構久里浜医療センター(樋口進院長)が中心となって実施した。米精神医学会が策定した診断基準に基づく調査票を使って無作為抽出した全国11都市の成人に面接で質問し、約1000人分の回答を集計した。今後、医師による診察を実施するとともに、都市部以外に調査対象を広げる。
今国会に精神保健福祉法の「改正」案が提出されている。昨年7月、入所者19人が殺害された相模原障害者施設殺傷事件の再発防止を掲げ、提案された。だが、中身は事件の核心ともいえる「優生思想」についてはほぼ素通り。代わりに措置入院患者を退院後も永続的に監視することや、警察の介入が含まれている。後者は薬物患者を事実上、医療から排除しかねない。当事者団体などは強く反発している。 (沢田千秋、三沢典丈) 【こちらは記事の前文です】 記事全文をご覧になりたい方は、東京新聞朝刊をご利用ください。 東京新聞は、関東エリアの駅売店、コンビニエンスストアなどでお求めいただけます。 「東京新聞電子版」 なら全国どこでも、また海外でも、記事全文が紙面ビューアーでご覧いただけます。 購読・バックナンバーをご希望の方は 「新聞購読のご案内」 をご覧ください。 掲載日やキーワードから記事を探す 「記事検索サービス」 も
殺人や殺人未遂などの罪に問われた名古屋大の元女子学生(21)に24日、有罪判決が言い渡された。法務省などによると、確定した場合には、罪の重さへの自覚を促すため刑務所で面接や指導を受ける。精神障害に対する治療を受けることも可能という。 女性受刑者は全国10カ所ある女子刑務所のいずれかに入所。犯罪の責任を自覚させる改善指導があり、講話や面接で遺族の心情を理解させ反省を深めたり、被害者に誠意をもって対応したりする方法を学ぶ。望ましい社会観や人間関係の在り方について指導を受ける。 医療体制は刑務所の規模などで異なるが、受刑者が望めば、精神科医の診察やカウンセリング、投薬を受けられるほか、症状次第では外部への通院も可能だ。専門医療を行う医療刑務所も4カ所あるとしている。 精神障害を抱えた受刑者の更生について精神科医の中島直医師は「入所中だけでなく、服役後に社会に適応できるように周囲が環境を調整するこ
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