軍備拡張や海洋進出を続ける中国と、中国を唯一の競争相手として対決姿勢を強める米国。大国のはざまに位置する日本はどう安全保障政策のかじ取りをすべきなのか。海上自衛隊呉地方総監を務めた伊藤俊幸元海将(63)に米中の思惑や今後の日米協議の焦点を聞いた。 中国の狙いは実現不可能 ――中国の海洋進出や米中の軍事バランスをどうみていますか。 ◆中国は中距離ミサイルの配備などで(沖縄、台湾、フィリピンなど結ぶ軍事戦略上の防衛ライン)第1列島線内で米空母が活動できない体制を実現しようとしているが、沖縄や台湾など全てを中国のものにしない限りその実現は不可能だ。 仮に中国のミサイルなどにより米空母が近づけなくなるとしても、米軍には「見えない空母」と言われる巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)が4隻あるからだ。1隻でトマホークを154発積むことができる。中国の最大の弱点は対潜能力で、潜水艦を見つけ出す能力が低い