日本と米国の間で在日米軍の基地使用などを取り決めた日米地位協定は「在日米軍によるさまざまな被害の元凶」と呼ばれながら、一度も改定されていません。2年以上にわたってこの実態をあぶりだそうともがいた「特権を問う」取材班の記者たちは、どのように問題と向き合ったのか。取材過程を含めて書き下ろした新著「特権を問う ドキュメント・日米地位協定」の冒頭部分を紹介します。全5回の初回にあたる今回は本編に入る前の「プロローグ」から。登場するのは米軍ヘリの首都低空飛行問題に迫った記者たちです。 鈍色(にびいろ)に沈むビル群は窓から遠ざかるほどにかすみ、輪郭をあいまいにしていた。光化学スモッグの影響か、大陸から流入した微小粒子状物質のせいかはわからなかったが、その日も午前中からかなり外気温が上昇していることはうかがえた。展望室内の空調は十分に行き届いている。だが、ハンディカメラを握る加藤隆寛(45)の右手は汗で