2023年はコロナ禍の反動か大作映画も数多く公開され、この記事に入らなかったものも含めて全体的にクオリティも高く、豊作だったと思う。 2024年もその傾向が続いているようで、ついでに面白い近作も紹介したいと思いながら記事を書くのを先延ばしにしていたらどんどん分量が増えてしまったので、できるだけ早く別建てで紹介したい。 という訳で、とりあえず2023年のベスト3と面白かった作品を挙げる。 第1位 『リバー、流れないでよ』 (公式サイト) 温泉街の老舗旅館が2分間のループに囚われる話。 持論だが、ループ物は観客から時間の感覚を切り離す反面、場面に繰り返し映し出される場所の魅力が問われる構造なのではないだろうか。 この作品では、老舗旅館のお勝手、ロビー、客間、別館という適度に非日常的な場所を通じ、複数のスタッフや宿泊客が関わることで、繰り返しを飽きずに楽しめる。 そしてなにより、裏手の小川で恋人
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日本テレビ系ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなられました。 とても悲しいです。 漫画を原作とした映像化のトラブルということで、僕の名前を思い出す人も多かったようです。 日テレ「セクシー田中さん」だけではない…意外と多いテレビ局と原作者のトラブル、「海猿」は未だ二次使用できず、「のだめ」で揉めたTBS 再放送もない「海猿」 「テレビ業界で最も騒がれた原作者とのトラブルは、連ドラだけでなく4度も映画化された佐藤秀峰氏の漫画『海猿』です。 最初にドラマ化したのはNHKで、国分太一の主演で02年に放送された『海猿~うみざる』(BS hi)でした。 その後、04年にフジが伊藤英明の主演で映画『海猿 ウミザル』を公開し、翌年に放送された連ドラ『海猿 UMIZARU EVOLUTION』は平均視聴率13・2%を記録。 映画2作目『LIMIT OF LOVE 海猿』は興収7
映画『窓ぎわのトットちゃん』 オリジナル サウンドトラック NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパンAmazon ある人から、「シロクマさんは『窓ぎわのトットちゃん』を見ておいたほうがいいと思う」と勧められ、疲れたまま週明けを迎えようとしている連休最終日に観に行った。映画館に来ているお客さんは大半が私より年上で、公開から約1か月にもかかわらず客席は結構埋まっていた。 私は原作を読んでいないし、この作品を作った人たちがどういう狙いで制作したのかを知らない。この作品を自分がどう受け取めたのかを確かめてみたかったので、パンフレットのたぐいを買わなかったからだ。インターネット上での評価や噂話もほとんど知らない。先週までノーマークだったからだ。 「トットちゃんはADHD」では片づけられない世界 映画が始まって間もなく、一般的な小学校に通学するトットちゃんが描かれる。私はまず、ここでスゲーと思っ
コロナ禍で、日本の映画文化の一翼を担ってきた小規模映画館「ミニシアター」が苦戦を強いられている。2022年7月には、その先駆け的な存在だった岩波ホールが、半世紀の歴史に幕を閉じた。東京・渋谷で40年にわたり、新人から巨匠まで、国内外の個性豊かな監督の作品を発信してきたユーロスペースの北条誠人支配人に、ミニシアターの現状と今後の展望を聞いた。 北条 誠人 HOJŌ Masato ユーロスペース支配人。1961年生まれ。法政大学在学中から映画の自主上映に関わる。85年、ユーロスペースの前身「欧日協会」に映写技師として入社。87年から支配人。上映プログラムの選定や特集上映の企画の他、配給や制作にも関わる。 場所ではなく「コンセプト」を喪失 1968年に多目的ホールとして神田・神保町に開館した岩波ホールは、74年から世界のうずもれた名画を世に送り出す「エキプ・ド・シネマ(映画の仲間)」運動を開始し
How Meta and AI companies recruited striking actors to train AI ストライキ中のハリウッドで メタがAI訓練データを撮影 時給150ドルで俳優雇う 全米で脚本家や俳優がAIの使用についてのストライキに入っている中、メタなどのテック企業は俳優を時給150ドルで雇ってAI訓練用の映像を撮影していた。こうして取られたデータはいずれ、俳優業界全体に影響をおよぼすかもしれない。 by Eileen Guo2023.11.06 2 8 9月初旬のある晩、28歳の俳優であるT(匿名希望のためイニシャルのみ)は、少々奇妙なセッションのために借りられたハリウッドのスタジオで、3台のカメラと監督、プロデューサーの前に座った。 この2時間の撮影では、少なくとも一般には公開されることのないはずの映像が撮られた。 人間向けではない。Tの声、顔、動き、表情
任天堂は、任天堂IPの映像化を自ら手がけることで、ゲーム専用機とは異なる経路で、世界中の皆様に任天堂が培ったエンターテインメントの世界に触れていただく機会を創出しています。 今回のプロジェクトにおいても、娯楽を通じてすべての方を笑顔にすることを目標に、任天堂自らが映画の制作に深く関与することで、任天堂ならではの独自のエンターテインメントを創造し、一人でも多くの方にお届けすることを目指して、努力を続けて参ります。 任天堂について 日本の京都に本社がある任天堂株式会社は、1889年に創業し、1983年にファミリーコンピュータを発売して以来、現在ではNintendo Switchを代表とするゲーム専用機のハードウェアおよびソフトウェアを開発・製造・販売しています。任天堂はこれまで、世界中で8億台以上のハードウェアと、56億本以上のソフトウェアを送り出し、ハード・ソフト一体型の展開を通じて、マリオ
映画『MINAMATA』は、日本では 2021年9月23日に全国公開されました。このウェブページの筆者(入口紀男)は、その映画が現代社会にもたらす「公益」に期待して、近くの TOHOシネマで観ました。以下、筆者の「感想」とその後の「アクション」についてお伝えいたします。 水俣で生まれ育った筆者が映画『MINAMATA』を観た全体の印象は、およそ最初から最後まで、事実と異なっているときに感じる「違和感」の連続でした。映画に出て来る木々や植物の種類も、家の造りようも、すべて水俣のものとは違っていました。石造りで畳の部屋という家は水俣にはありませんでした。また、官憲が令状を明示しないで家宅捜索をしたり、そこで人を殴ったりするようなことは、水俣でなくても、法治国家では起こり得ないことでしょう。 筆者は映画が制作される前(2018年)に制作・主演のジョニー・デップに手紙を送り、「水俣病」は地域に対す
マーティン・スコセッシ、スーパーヒーロー映画が「映画文化にもたらす危険性」を指摘 ─ 「我々は抵抗しなければ」発言の真意を読み解く Photo by THE RIVER 2019年10月、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の世界的ヒットから間もない頃に、巨匠マーティン・スコセッシが「マーベル映画は映画(cinema)ではない」と発言したことは大きな物議を醸した。「よくできているし、俳優も与えられた環境下でベストを尽くしているけれど、最も近いのはテーマパークだと思う」と語ったのだ。 あれから4年、スコセッシの危機感は変わっていなかった。英GQのロングインタビューで、スコセッシは再びスーパーヒーロー映画のありかたに警鐘を鳴らしている。フランチャイズ作品やコミック原作映画の氾濫を、彼は“映画文化に対する一種の危機”として捉えているのだ。 では、スコセッシの真意とはいったい何か。実際のところ、スコセ
宮崎駿、新海誠だけじゃない。作家性にあふれた「原作がないオリジナルアニメ映画」の傑作を見てほしい 宮崎駿、新海誠、細田守……原作のないオリジナル企画のアニメ映画の監督は、まだまだたくさんいます。「これだけは見てください!」と心からお願いできる、監督の作家性が強く表れたアニメ映画を4作品紹介しましょう。(C)新見伏製鐵保存会 日本の有名なアニメ映画の監督といえば、宮崎駿、新海誠、細田守を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、本当にすごいアニメ映画監督は、まだまだたくさんいます。 原作のないオリジナル企画かつ、テレビシリーズなども放送していないので予備知識がなくても楽しめる。監督の作家性が色濃く表れ、かつエンターテインメント性も高い、「これだけは見てください!」と心からお願いできるアニメ映画を4作品紹介しましょう。実際に鑑賞することはもちろん、監督の名前もぜひ覚えていただきたいのです。 1:『
灼熱の一日が終わろうとしている。利根川の川面は西陽をぎらぎらと反射して、河原に作られたゴルフ場では帰り支度の男たちが、和やかに声をかけ合っている。しばらく川沿いを歩き回ったけど、渡し場の痕跡らしいものは見つからない。土手の草の上に僕は腰を下ろす。 当然だけど惨劇の余韻などどこにもない。一陣の風が汗ばんだ頬を撫でる。たぶん78年前のその日も、きっと同じような風は吹いていたと思う。 大正12年9月6日、関東大震災から6日過ぎたこの日、千葉県葛飾郡福田村(現野田市)で事件は起きた。大八車に日用品を積んだ15人の行商人の一行がこの地を通りかかった。福田村三ツ堀の利根川の渡し場に近い香取神社に彼らが着いたのは午前10時ごろ。 この行商人の一行は五家族で構成されていた。一人が渡し場で渡し賃の交渉をする間、足の不自由な若い夫婦と1歳の乳児など6人は鳥居の脇で涼をとり、15メートルほど離れた雑貨屋の前で、
2023年映画館での鑑賞10作目。 三連休中のお昼過ぎの回を観賞。今回は長男と一緒に。 観客は200人くらいで、こんなに映画館の客席が賑わっているのを久しぶりに見た気がします。 これだけ大勢の人が観ていたにもかかわらず、上映中は、みんながこの作品の行方を見届けようとしているがゆえの静寂に包まれていたのが印象的でした。 僕もポスターのなんかちょっと気持ち悪い鳥の写真とだいたいの上映時間くらいしか予備知識はありませんでした。 そんなに積極的に観るつもりはなかったのですが、予定外に時間が空き、映画館が近くにあったので、それじゃあ、ネタバレが世間に浸透する前に話の種に観てみるか、という感じだったのです。 以下は完全ネタバレなので、未見の方は読まないことを強くおすすめします。 この作品が「まぎれもない名作である」とは思わないのですが、「よくわからないもの」をよくわからないまま観て、そこで自分が受け取
『バービー』グレタ・ガーウィグ監督来日インタビュー「次代の女性監督に繋ぎたい」 ─ 騒動にも言及 (c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング主演、人形の世界をポップでカラフルに描く『バービー』が、2023年8月11日より日本公開になる。このため、監督を務めたグレタ・ガーウィグが来日。THE RIVERの単独インタビューに応えた。 この取材が行われたのは8月1日で、インタビュー開始の直前までに、米ワーナー・ブラザーズより米公式X(Twitter)アカウントによる不適切な投稿への謝罪文が発表された。このインタビューの中で、筆者がこの騒動に対する所見を尋ねると、グレタは神妙な面持ちで次のように回答した。 「ワーナー・ブラザースが謝罪したことは、私にとって非常に重要なことです。発表がなされたことは、とても重
先月21日にアメリカなど各国で公開されたクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が、大ヒットしている。“原爆の父”として知られるJ・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画で、上映時間は3時間、観客の年齢が限られるR指定であるにもかかわらず、興行収入はすでに4億ドルを超えた(日本での公開は未定)。 シリアスな映画が苦戦しがちな近年、これだけの数字を叩き出せるのは、さすが全世界にファンを持つノーランならではだ。シネマスコア社による観客の評価は「A」と、満足度も高い。 R指定の理由はバイオレンスではない だが、一部からは疑問の声も聞かれる。原爆を作った人の話であるのに、広島、長崎の被害の状況がまるで映し出されないのだ。筆者もそこは意外に感じた。日本で公開が決まっていなかったり、大人向けのR指定を受けたりしたのは、被爆地の恐ろしい状況が描かれるからではないかと思っていたのだ。 しかし、スト
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